1977年松竹。

 藤純子主演の傑作『緋牡丹博徒 お竜参上』(1970年)はじめ、任侠映画で名高い加藤泰のフィルモグラフィの中で、この作品は毛色が変わっているといってよい。『陰獣』は、江戸川乱歩の数多い探偵小説の中でも、もっとも官能的で隠微で猟奇的な色合いの濃い作品である。
 しかし、ここでも加藤泰の独自のスタイルは十二分に発揮される。ギョッとするほどのローアングル。例えば、テーブルの下から、テーブルの背面をアップに大きくとらえながら、その左右にテーブルで語る人物の顔を配置する。現実では、このアングルでこの構図で人を見上げることがあり得るのは飼い猫くらいだろう。光と影と色彩の人工的でありながら生々しいタッチも健在である。
 加藤泰の奇抜なスタイルが、物語の変態性にうまくマッチしている。

 いくら水戸黄門で大衆的な人気を得ようが、『明日のジョー』で矢吹丈の声を演じようが、①ジャニーズ出身、②『犬神家の一族』のスケキヨ、③そしてこの作品、の3点セットによって、あおい輝彦の変態性は今後もぬぐい去られることはないだろう。


 それにしても、陰獣とはなんのことだろう?
 乱歩の造語だろうか?
 倒錯した性癖の持ち主を陰獣と言うのならば、世の中は陰獣ばかりだろうに・・・。



評価: B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!