2003年アメリカ映画。

 これもまた原作はフィリップ・K・ディック(FKD)。
 「ディック感覚」に酔うことができる。(→ブログ記事参照http://blog.livedoor.jp/saltyhakata/archives/6379736.html

 すんなりとはわかりづらい設定の、すんなりとはわかりにくいストーリーを、見事な脚本とテンポの良さとでゲームのように面白く仕上げている。
 さすがジョン・ウーだ。

 大企業の極秘開発の仕事を請け負うジェニングス(ベン・アフレック)は、仕事が済んだら雇用期間のすべての記憶を消去されるのが決まりとなっている。
 この記憶の消去作業が、脳の中の特定の記憶(メモリー)の詰まった特定の細胞を、あたかも「検索してファイル選択して削除する」みたいな仕組みになっているのが面白い。
 一定期間の記憶喪失という仕掛けだけでも興味深い物語を作れそうだが、FKDはそれだけじゃすまさない。
 3年間契約の意図的・自覚的な記憶喪失中にジェニングスが携わって成功させた研究の中味は、なんと未来を見ることのできる装置の開発だったのである。
 かくして、ジェニングスは、任務終了と共に、過去3年のいっさいの記憶と一緒に、垣間見た未来の記憶をも失うことになる。
 この未来の記憶、未来の地球を見てしまった衝撃故に、ジェニングスはこの装置の存在を疎み、いずれ研究施設に舞い戻って破壊する決心をする。そして、記憶の消されぬうちに、いろいろそのための準備をするのである。
 さて、社によって記憶が消され3年前の自分に戻ってみると、当然自分自身で仕掛けた準備の意味が判らない。手元に届いたのは、封筒に入った意味不明の20個のアイテム(ライター、サングラス、整髪剤、ルーペ、腕時計、煙草、どこかの鍵・・・・・e.t.c.) 送り主は自分である。
 この20個のアイテムの意味はなんなのか?
 どこで、どう使えばいいのか?
 自分は一体、何を意図していたのだろう?

 ほかならぬ自分の仕掛けた謎を、自分で一つ一つ解いていくというところにゲーム的な面白さがある。それぞれのアイテムがどう使われ、どう役に立つかを見守る楽しさがある。


 ところで・・・。
 20個のアイテムはその役目を十分に果たし、結果的にジェニングスを暗殺の危機から救ってくれた。装置も破壊され、ジェニングスは恋人と結ばれ大金持ちになる。
 めでたしめでたし・・・・。
 しかし、それが可能となったのは、ジェニングスが未来を垣間見て、任務終了後に身の上に降りかかる事態をあらかじめ知っていたからである。
 つまり、「未来を変えようと行動する自分」という未来を見たことになる。

 なんか矛盾してないか?????

 ・・・・・・・・・。

 こういうタイムワープものは深く考えたらダメである。



評価: C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!