2014年ロシア映画。

 美しい映画である。
 セリフが一切ないことが観る者の意識を、その美しい映像にのみ惹きつける。
 真の意味で‘衝撃的な’ラストシーンをのぞく、あらゆるシーン、あらゆるカットが、世界の豊饒と生のエロスを謳い上げていて、観る者の官能を悦ばせ、映画を観ることの根源的な至福を追認する。
 とりわけ美しいのは主役の少女を演じるエレーナ・アン。
 韓国人の父とロシア人の母を持つモスクワ生まれの17歳(撮影当時14歳)。アレクサンドル・コット監督の目にとまり、一切の演技経験がなかったにもかかわらず主役に抜擢されたとのこと。JK(女子高生)には関心なくても美少女にはコロリと参ってしまうソルティなのだが、エレーナの美少女ぶりには完オチした。少女時代の浅丘ルリ子や吉永小百合、後藤久美子や沢口靖子、エリザベス・テーラーやジェニファー・コネリー・・・・・といった系列に連なる正統派美少女。今後どのような美女に成長していくか楽しみである。

 怖ろしい映画である。
 川床から砂金を拾い集めるようにして90分淡々とデリケートに積み重ね磨き上げてきた「美」の結晶を、最後のシーンで、観る者に心の準備を与えることなく、完膚なきまでに破壊してしまう。その残酷さは比類ないものである。
 よくよく観れば、伏線はあった。セリフは一切なくとも、いくつかのシーンから少女を中心とする登場人物たちの置かれている状況は、推測することが可能であった。なにより、『草原の実験』という変わったタイトルから、この映画が単なる家族ドラマや思春期の恋愛ドラマではないことは予測してしかるべきであった。(原題Ispytanieは「実験」の意)
 しかし、映像はあまりにも美しく、物語はあくまでも牧歌的で、よもやこのように壊滅的なラストが観る者を待ち受けているとは思いの外であった。
 観る者は、映画を観終わったあと、登場人物同様、まったく言葉を失うことになる。



評価:B+ 

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!