プライドパレード2017-3


 今年も東京レインボープライドに参加した。
 主催者発表によると、メインイベントである代々木公園でのパレード&フェスタには、約108,000人(5月6日35,000人、7日65,000人、パレード5,000人、ウィークイベント3,000人)が来場したとのこと。大盛況である。
 ソルティは7日(日)午後のパレードに参加したのみであるが、出発地点である代々木公園イベント広場はたいへんな賑わいであった。ぎっしり並んでいるブースを見ると、昨年以上に参加企業が増えている気がした。
 資本主義社会やな~。
 セクシャルマイノリティの権利や差別反対を声高に訴えるよりも、そこ(=セクシャルマイノリティ層)に多大な市場価値あるいは購買力があると社会に知らしめたほうが、手っ取り早くセクシャルマイノリティの顕在化と社会的包括につながるということである。たしかに、ゲイやレズビアンの社会人は子供をつくらない人が多いので資産を持っている傾向は否めないし、買い物や旅行やレジャーの好きな人も多いので関連企業が彼らの懐をねらうのも無理のない話である。
 また、欧米ほどには個人主義や人権思想が徹底していない日本では、表立って人権や差別反対を訴えられることに抵抗を感じる人が少なくないように思う。むしろ、「楽しそう」とか「儲かりそう」とかいうイメージの普及のほうが人は集まってきやすく賛同を得られやすいのかもしれない。いわば、‘関西のおばちゃん’気質である。
 ただ、市場価値に基づく社会的包括は、逆に市場価値が下がると平気で社会的排除に様変わりする可能性がある。「金の切れ目が縁の切れ目」だ。やっぱり、お祭りモードだけでなく、権利の主張や法的・政治的権利の獲得という社会運動モード、この両輪が必要なのであろう。

プライドパレード2017-5


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 今回も友人と共に、TOKYO NO HATE のフロートに加わって渋谷の街を練り歩いた。
 五月晴れ(気温23度)でさわやかな風がビル街を通り抜ける。つくづくパレードの開催を8月から5月に変更したのは正解だと思う。(この変更には、昔の主催組織と今の主催組織の間のややこしい事情があったらしいのだが・・・)
 都内で行われるセクシャルマイノリティのパレードに90年代から参加しているソルティにしてみると、昔日のパレードからの様変わりにある種の感慨を持たざるを得ない。一番驚くのが参加者の多様性である。昔は参加者の姿を見るだけで、明らかにゲイ&レズビアンパレードと分かるものであった。レザーパンツ一枚の筋肉誇示のマッチョマン、お姫様女装のオネエ、水前寺清子のようなヘアスタイルのバリバリのダイク・・・。街を歩いていても周囲の通行人の好奇と驚きの視線を一様に感じたものである。
 今や、プラカードや旗を彩るレインボーカラーの意味を知る人でなければ、これがいったい何のパレードなのか即座に分かる通行人は少ないかもしれない。それくらい参加者の顔ぶれが豊かなのである。とくにここ数年、子連れのファミリー(ヘテロカップル)の参加が増えているのに隔世の感を抱く。両親に手を引かれながら可愛らしい天使の扮装をして歩いている幼女の姿を見ていると、彼らにとってはもはやゴールデンウイークのレジャーの一つ(ヴェネチアの仮面カーニバルみたいな)になっているのではないかと思えた。天使にとっては、マッチョもお姫様も仮装以上の意味はないのかもしれない。

 
プライドパレード2017-7
今年はレインボーカイトを上げてみました。


 パレードからイベント広場に帰還し、人だかりのブースを見回っている時に事件は起きた。一緒に行った友人のカバンからデジカメが盗まれたのである。開口部分にチャックのないショルダーバッグで、外から中身が覗けたのだ。ヨドバシで15000円で購入したものである。
 気がついてからすぐに通った道を後戻りして落ちていないか探し、総合受付に落し物として届いていないか確認した。見つからなかった。見つかった場合に連絡がもらえるように遺失物ノートに詳細を記載したところ、すでに何十名もの記載があった。
 そこで友人とは別れた。友人はその後、最寄りの交番に出向いて盗難届けを出そうとした。が、盗難の場合、書類を作成するのに数時間かかると言われて(ほんとうか?)、仕方なくあきらめたそうである。
 

プライドパレード2017-2


 翌日届いた友人からのメールの一部。

届出するほど大事なものを失くした人がそれだけいる。さらに、失くしたことにまだ気づいていない人、あきらめた人もいるだろうと推定すると、無料で参加できて、みな浮かれていて、結構金目の物を持っていることで、既にスリ・置き引きの‘穴場’として犯罪グループなんかに目をつけられているんじゃないかと思います。

 う~む。
 たしかにその可能性はある。しかも、友人のように警察にまで出向く人がどれだけいるだろう? 手間ひまということではなく、タフさという点で――。
 参加者の中には、「憧れの東京のパレード」に地方から泊りがけで出てきたクローゼットの若者だっていることだろう。主催団体の受付ならともかく、警察にまで出向いて被害を届ける勇気があるだろうか。いろいろと聞かれることだろう。「どこで失くしたの?」「そのフェスティバルって何?」「じゃあ、君はゲイなの?」「とりあえず住所と名前をここに書いて」・・・e.t.c. そうしたやりとりをたった一人で経験するのは、数多い沿道の賛同者にエールを送られながら、たくさんの仲間と一緒にパレードを歩くのとはまったく違った種類のタフさが要る。あきらめる、というか泣き寝入りする人も少なくないだろう。
 被害届を出される可能性が低い。そこまで読んでセクシャルマイノリティをカモにしている泥棒あるいは犯罪グループが実際にいるのかどうか分からないが、市場価値にはこういった側面もあったのである。
 
 奪われていいのは貞操くらいにしておきたいものである。

プライドパレード2017-10
 汝、盗むべからず。(カトリック関連のブースで売っていたティーシャツ)