2009年日本映画

はじめて観る園子温。
今まで観なかったのが不思議?――でもないか。
自分が世間の評判とか流行に無関心なためだろう。主役の少女を演じている満島ひかりも、列車内や駅のホームで見るビールの広告でようやく最近知った。

こんなに面白い映画を9年間知らなかったのは損した。
と、一瞬思いかけたが、早く知ったからといって別にどうってこともなかった。
知るべき時に知ればいい。本当に面白いものは時の移りに関係ないのだから。

ギャグ漫画のようにエキセントリックで滑稽な筋立て、スピーディかつ予測のつかない展開、愛と性の苦難と勝利を真正面から描き切る気概と迫力、役者たちの体当たり演技。237分という上映時間がまったく苦にならない――どころかあれよあれよと過ぎてしまった。
峯田和伸がはじけた『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(三浦大輔監督)を想起した。

盗撮、親からの虐待、カルト教団の洗脳騒ぎといった現代的テーマを取り合わせた物語自体も面白いが、狂気の域に達するかのような役者たちの炸裂するパワフル演技が印象に残る。
主役の少年ユウ(西島隆弘)、少女ヨーコ(満島ひかり)は、たとえこれ一本で終わったとしても観る者の記憶に残る熱演である。
二人の義理の母親カオリを演じる渡辺真起子の「欲しいもののためにすべてを蹴散らかす」バブリーな演技もいっそすがすがしい。「愛のむきだし」というタイトルにもっとも近いのは彼女であろう。
カルト教団の幹部を演じるコイケ(安藤サクラ)がまた上手い。主役の二人をしのぐほどの存在感。「こいつ誰?」と思って調べたら、奥田瑛二と安藤和津の娘だった。美人じゃないが、目を惹きつけざるをえないフェロモンを放っている。

園子温、すばらしいじゃないか。
しばらく、最近の日本映画を追ってみようかな。