★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損

陣馬山 012


9月1日 映画:『エル ELLE』(ポール・バーホーベン監督、2016年フランス、ベルギー、ドイツ、130分)
・・・・・エル Elle はフランス語で「彼女」の意。ポール・バーホーベン監督は『ロボコップ』(1987)、『トータル・リコール』(1990)、『氷の微笑』(1992)と90年代に気を吐いた人で、とっくに一線を退いたかと思っていたら、見事な復活ぶり。しかも、90年代と違い、見事なまでに成熟した大人の映画である。主演のイザベル・ユペールは『主婦マリーがしたこと』(1988)、 『愛、アムール』(2012)ほか数多くの名作に出演している押しも押されぬフランスの名女優。この二人のベテランコンビでこれだけ魅せる作品に仕上がった。とにかく、主役の女社長ミシェルを筆頭に登場する女性たちの強さに圧倒される。つまるところ、男は女の手のひらの上で威張っているだけなんだと、バーホーベン監督はスランプ期間に学んだに違いない。
★★★

9月2日 秩父34ヵ所札所巡り 第4日
・・・・・秩父市から小鹿野に分け入り、山間にある札所31番を目指す。

9月3日 秩父34ヵ所札所巡り 第5日
・・・・・小鹿野に一泊し、峠越えして札所32番を、秩父市に戻って札所33番を目指す。

9月4日 映画:『戦艦大和』(阿部豊監督、1953年新東宝、104分)

・・・・・戦艦大和乗組員であり生還した吉田満が書いた『戦艦大和ノ最期』が原作。
★★★

9月7日 本:『後期高齢者 四国遍路を歩いてみれば』(狭間秀夫著、2016年風詠社)
・・・・・1934年(昭和9年)大阪生まれの著者が、2011年春から2012年秋の間に6回に分けて、四国八十八ヶ所を一人歩いて巡礼した記録である。タイトル通り、77歳のときに当たる。たいした体力、気力と感嘆する。昭和ヒトケタ世代の強さを思う。著者にはとりたてて信仰心もなく、計画性も事前準備もなく、行き当たりばったりの旅の様子が描かれている。本書を書く段にあたっていろいろ調べた結果、自分が素通りした名所や遍路お役立ち情報にはじめて気づいた、という述懐が多い。途中まで大師堂(ダイシドウ)を「タイシドウ」と思っていたとか・・・。これがこの人の性格であり生き方(生き癖)であり人生なのだろう。良くもなければ悪くもない。面白いなと思うばかり。人生が旅ならば、旅もまた人生の表現なのだろう。
★★

9月8日 マンガ:『方丈記』(原作:鴨長明 画:水木しげる、1212年原作、2013年小学舘)
・・・・・原作は1212年(建暦2年)に書かれている。火災、地震、竜巻、飢饉と次から次へと災難降り続く(今とよく似た)時代に、聖にも俗にも成り切れず、山中の方丈(四畳半)の庵に隠者のごとく住みなし最期を終えた鴨長明(1155-1216)。「行く河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」は、誰もがどこかで耳にしたことあるフレーズだろう。同時代の『平家物語』とともに、日本人の無常観を表す代表的古典である。長明の父親は下鴨神社の神官であり、長明もその職を継ぐのを念願としていた。それが叶わず、また家庭生活も破綻し、社会的には成功者とは言い難く、本人にとって失意の人生であった。しかし、亡くなる4年前に執筆したエッセイが800年という歳月を超えて読み継がれ、その名を今に残しているのだから、世は不思議なものである。草葉の陰の当人がこれを知ったら、「無常観」がずいぶん薄らぐのではなかろうか。(多くの日本人が持つ「無常観」は、そもそもの仏教の「無常」とはずいぶんニュアンスが異なるのだが・・・) 水木しげるの画風は、乱世の悲壮さ、庶民の土臭さを表現するにうってつけである。
★★

方丈記マンガ


9月10日 本:『仏教は宇宙をどう見たか アビダルマ仏教の科学的世界観』(佐々木閑著、2013年化学同人社)
・・・・・大乗仏教の影響を受けていない仏教哲学・アビダルマ(論蔵)についての入門書。
★★★

9月14日 秩父34ヵ所札所巡り 第6日
・・・・・いよいよ満願

9月16日 本:『四国遍路の民衆史』(山本和加子著、1995年新人物往来社)
・・・・・四国遍路に興味を持った民間の歴史家による研究書。四国遍路の成り立ちから、江戸期の大衆化、お接待文化の興隆、病人や乞食や強盗の流入と遍路排斥の流れ、そして戦後の遍路ブームまで、四国遍路の長く深い歴史がまとめられている。四国という土地は、他所から来た様々な人々を、病気・貧困・差別・絶望・厭世など様々な苦しみに打ちひしがれている人々を、(庶民レベルでは)無条件に受け入れてお接待で支えてきた。その懐の深さ、お大師様信仰の篤さに感動する。江戸時代以降の様々な遍路たちの姿を、彼らが残した巡礼記から蘇らせる章が面白い。本当に死と紙一重の命懸けの旅だったのだ。スマホ遍路できる現代とは文字通り隔世の感がある。
★★★

9月19日 第193回すがも巣ごもり寄席(スタジオフォーにて)
・・・・・柳亭市弥、古今亭志ん松、柳家小んぶ、三遊亭美るくの二ツ目競演。
★★

9月20日 本:『空海の風景』を旅する(NHK取材班著、2002年中央公論社)
・・・・・空海の生涯を振り返りながら、過去と現在の空海ゆかりの土地を紙面で旅する。
★★★



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