へんろ道は山が多い。
300メートル超える山が20以上ある。
うち15は500メートルを超える。

昔の遍路さんはみな、この山をひとつひとつ足で越えていったのだ。
頭が下がる。

今は道路が整備されて、多くの山では迂回路を取ることができる。
なによりかにより、トンネルが通っているところが多い。

遍路はそこで選択を迫られる。
昔ながらの「へんろみち」を選び峠越えするか、それとも車道を選んでトンネルを抜けるか。

トンネルを選べば、
①肉体的にラク。
②時間が大幅に短縮される(=距離を稼げる)
③道に迷うことがない。
④雨や雪や風をしのげる。
メリットが大きい。

一方、デメリットもある。
①排気ガスを浴びる。
②交通量の多い所は危険。
③景色が楽しめない。
④遍路気分を味わえない。
⑤ラクな道を選んでいる後ろめたさにかられる。

「俺はトンネルは一切使わない」と決めて歩いている猛者というか苦行マニアもいる。
へんろ道でなく国道ばかりを選んでトンネルメリットを享受する人もいる。
多くの遍路は、その日の気分や体調、予定の道のり(その晩の宿泊地)を鑑みて、随時どっちにするか決めているようである。
ソルティも基本そうなのだが、高知の終盤で右足首を痛めてからというもの、峠越えを回避して迂回路やトンネルばかり選んできた。
また、西予地方は7月7日の豪雨災害の爪痕生々しく、峠越えのへんろ道が土砂で埋まり、いまだに通行止めになっているところもある。
さすがの猛者もこれには逆らえまい。

大事をとって無理しないでいたおかげか、足の調子は良くなってきている。
一時は「疲労骨折じゃないか。通し打ち断念か」と覚悟を決めたほど、痛みが強かった。
どうやら、一日25キロを超えるとダメ出しが来るようである。
飛行機の手荷物制限か!

昨日は、標高470メートルの峠越えがあった。
43番明石寺のある西予市から、別格7番&8番のある大洲市に入る境にある鳥坂峠である。
例によって、国道56号線を歩いてそのまま鳥坂トンネルを通過するルートと、トンネルの少し手前でへんろ道に入って峠越えするルートがある。
ソルティは、リハビリの意味を込めて久方ぶりに峠越えを選んだ。
これから別格7番出石寺(812メートル)や久万高原のひわた峠(790メートル)が控えているからである。
文字通り、足慣らしが必要だ。
そしてまた、鳥坂トンネルは交通量がとても多いのに、道幅が狭くて、歩道がついていない。それが1117メートルも続く。
トンネル派でも回避したくなる物件だ。

峠に入る村道の入口でしばし休憩したあと、ストレッチしてへんろ道に入った。
まもなく山道が始まった。
大丈夫、痛みはない。
スイスイと登っていける。

やっぱり、へんろ道はいい。
空気は澄んでいるし、景観も目の保養になる。
靴底の感触もアスファルトとは違って、柔らかだ。
車だらけの堅い国道とは比べものにならない快適さ。

と、林道に出た。
標識に従って右折。
道は平坦になり、それから徐々に下っていく。
「おお、もう頂上に達したのか! 早かったなあ~」
甦った健脚にうれしさ一入である。

道なりに進んでいくと、不意にとんでもない光景が現れた。

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どう考えても、これは通行止めである。
道を間違えたに違いない。
標識を見落としたのだろう。
あるいは、さっきの分岐で右と左を取り違えたか。
それにしても、通行止めの標識がなかったのはどうしてだろう?
それすら見落とした?

しばらく呆然と土砂の山を眺めていた。
「戻るしかないか」
が、さっきの分岐から歩いてきた距離を思うと、簡単に引くに引けない。
ここはスマホの出番だ。
Google Map様々だ。

GPSで現在地を確認する。
山中なので今いちよくわからないが、さっきまで歩いていた56号線が近くを走っている。
そこに出ればなんとかなる。
問題は、この土砂の向こう側らしいということだ。

イチかバチか、土砂山に登ってみた。
見ると向こう側にはきれいな林道が続いている。
崖崩れはほんの一角だけみたいだ。
そのまま土砂山を越えて、向こう側に降り立った。
良い子はマネしちゃいけない。

GPSを頼りに道なりに下っていくと、木々の間から国道56号が下方に見えた。
ほっとした^_^;

さらに下っていくと、道の真ん中に「通行止め」の標識があちらを向いて立っていた。
「やっぱりな」
その脇を通り抜けて小さな村落を下っていくと、国道に合流した。
「やれやれ。どうにか峠は越えたようだ」

だが、どうも目の前に広がる国道沿線の里山風景に見覚えがある。
トンネル前から分け入ったへんろ道に似ている。
もしかして・・・

GPSで確認する。

鳥坂トンネルはすぐ近くにある。
その向こうが大洲市だ。

!!

なんとまあ、ソルティは結局、トンネルの左側から山を登って、トンネルの上を通過し、トンネルの右側に降りたのであった!

・・・・・・・。

もちろん、もはやトンネルのデメリットなぞ目じゃない。
長い長い鳥坂トンネルに足は向かった。

かくして、トンネルも、峠も、制覇したのである。

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