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1951年アメリカ
168分


テクニカルカラーの歴史スペクタル大作。
キリストが磔刑され暴君ネロが支配するローマを舞台に、英雄マーカス将軍(=ロバート・テイラー)と迫害を受けるキリスト教徒の娘リジア(=デボラ・カー)との運命的な愛を描く。

CGのない時代の撮影技術の高さ、贅沢極まるセット、迫力満点のアクションシーン、大量のエキストラを投入した群衆シーン、ハリウッド随一の美男美女スターの放つ輝き、ベテラン俳優の重厚な演技。(無名時代のソフィア・ローレン17歳、うら若きエリザベス・テーラー19歳が出演しているのも見物)
まぎれもなくハリウッド黄金期を代表する一作である。
もし今、最新のCG技術を駆使し国際的トップスターを起用して同じ映画を制作したとても、この旧作を凌駕することはできないだろう。
その差は何といっても創作に掛けるスタッフの熱量である。
画面から滲み出てくるようなパッションが見る者を釘付けにする。

とりわけ、ネロを演じるピーター・ユスティノフの凄まじい熱演、怪演。
これが名探偵エルキュール・ポアロ(1978年『ナイル殺人事件』ほか)を演じたのと同じ人とは到底思えない。
この鬼気迫る演技を目にするだけでも、この映画を観る価値はある。

原作はヘンリク・シェンキェヴィチの同名小説。
クォ・ヴァディスとはラテン語で「あなたはどこに行くのですか?」という意味である。
出典は、聖書に出てくる使徒ペテロのエピソード。
初代ローマ法王となった人である。

ネロのキリスト教徒迫害を逃れて夜明けのアッピア街道を急いでいたペテロは、こちらに向かって来るキリストの幻影を見る。
ペテロは問う。
「主よ、あなたはどちらに行かれるのです?」
キリストは答える。
「お前が民を見捨てるのなら、自分がこれからローマに行き、今一度十字架にかかって来よう」
ペテロは道を引き返し、同志と共にローマで処刑される。


ソルティはこれまで「クォ・ヴァディス?」という問いかけを、キリストが発したものと思っていた。
「お前はどこに行くのか?」と、逃げるペテロを諌める言葉と思っていた。
が、違った。
ペテロがキリストに向けて発した言葉だったのである。
キリストは弟子を叱責したのではなく、自らの寡黙な行動によって弟子を改心させたのだ。

新年早々の永年の勘違いの訂正であった。




評価: ★★★★



★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損