中川学(なかがわがく)というイラストレーターを知ったのは、2016年3月のこと。
 JR中央線国分寺駅最寄りの「丘の上APT兒嶋画廊」というギャラリーで開催された「泉鏡花 化鳥展」を見に行った折である。
 泉鏡花の幻想短編『化鳥』をモチーフとする美術展であったのだが、このとき会場に置かれていたのが、中川学による絵本『化鳥』であった。

 
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 手にとってめくっていたら、「これ、ほしい!」と思った。物欲のないソルティにしては珍しいことである。
 家に帰ってネットで調べたところ、中川学は1966年京都生まれの浄土宗の僧侶。96年よりイラストレーションの仕事を始め、今や世界へと活躍の場を広げている人気画家である。
 さっそく『化鳥』を注文した。
 
 どんな画風か?
 口で説明するより実際に見たほうが早い。こちらが彼の公式ホームページである。

 スタイリッシュな線と構図、色彩の雅やかな美しさ、ユーモラスな造形、幻想性、古き日本の懐かしさともの哀しさ、母性への郷愁・・・。これらの要素はまさに泉鏡花の世界を描くのにピッタリである。
 
 中川は『化鳥』のほかにも、鏡花の『龍潭譚(りゅうたんだん)』(1896年/明治29年発表)と『朱日記』を絵本化している。『龍潭譚(りゅうたんだん)』は現在販売終了しているようだ。
 先日、近所の図書館の絵本コーナーで『朱日記』を見つけた。これは、村(鏡花の故郷である金沢)の大火事をめぐる不思議な出来事を綴った作品である。朱色と墨の2色で描かれた、もの狂おしくも美しい鏡花の世界が時を忘れさせる。


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 嬉しいことに、中川は鏡花作品の絵本化をライフワークにしているらしい。いずれは『高野聖』にチャレンジするのだろう。楽しみである。
 

『化鳥』・・・2013年国書刊行会、原作1897年(明治30年)発表
『朱日記』・・・2015年国書刊行会、原作1911年(明治44年)発表




評価: ★★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損