2006年12月ミラノスカラ座ライブ(DECCA制作)

指揮:リッカルド・シャイー
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
ミラノスカラ座管弦楽団・合唱団・バレエ団
キャスト
 アイーダ : ヴィオレッタ・ウルマーナ
 ラダメス : ロベルト・アラーニャ
 アムネリス : イルディコ・コムロージ
 国王 : マルコ・スポッティ
 ランフィス : ジョルジョ・ジュゼッピーニ

 オペラの殿堂ミラノスカラ座の2006年シーズン幕開けに、なんと20年ぶりの新演出で組まれた『アイーダ』である。
 戦後のオペラ界に帝王のごと(女帝のごと?)君臨し続けた名演出家ゼッフィレッリを持ってくるあたりに、スカラ座の威信と誇りをかけた取り組みが感じられる。たしかに昨今はニューヨークのメトロポリタン歌劇場に押され気味だし・・・。
 
 この上演は、超一流の指揮者とオケと歌手とダンサーを揃え、ゼッフィレッリお得意の豪華絢爛にしてオーソドックスな大衆受けする演出のもと、スカラ座の名に恥じない大舞台に仕上がっている。
 が、何かが足りない。
 観ていて退屈を感じてしまう。
 すべてが高レベルで揃っているのは間違いないが、それが裏目に出て、なんら特色ない最初から及第点を狙っただけの舞台になっているように感じられた。
 終幕後の長々と続くスタンディング・オベイションには納得いかないものがある。
 
 歌手もアムネリスのイルディコ・コムロージの熱演をのぞけば、情熱の感じられない紳士淑女的な歌唱と演技に終わっている。
 アイーダ役のヴィオレッタ・ウルマーナは美声だが、声に芯がなく心に響いてこない。演技も重々しいばかりで、人質となったヒロインの苦悩は感じられるが、ラダメスへの愛は感じられず。そのせいか華やぎがない。
 ラダメス役のロベルト・アラーニャは、さすがにベテランの歌い回しで、聴かせどころを押さえている。が、声に張りがない。(二日目の舞台で客席からブーイングを受け、途中降板したとのこと)
 
 このプロジェクトが行われた2006年と言えば、当時スカラ座の総支配人であったカルロ・フォンタナと音楽監督リッカルド・ムーティの対立に端を発したお家騒動がやっと終息し、新体制で船出したばかりだった。思い切った冒険をするよりも、安全牌を揃えて成功の裡にいいスタートを切りたかったのかもしれない。
 過分に思える客席の拍手喝采も、お家騒動の終息を喜び、新体制を応援していこうという根強いスカラ座サポーターたちの心意気の表れなのであろう。


スカラ座
ミラノ・スカラ座


評価:★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損