2016年イタリア、フランス
108分

 原題 LE CONFESSIONI「告解」は、言うまでもなく、罪を告白するキリスト教の儀式。

 風光明媚なドイツの高級リゾートホテルで、G8の財務大臣会議が開催されている。呼びかけ人は、国際通貨基金(IMF)の専務理事で世界経済に君臨するダニエル・ロシェ(=ダニエル・オートゥイユ)。富と権力のみを生き甲斐とする冷徹なエコノミストだ。会議では、ダニエルの主導のもと、国際情勢を大きく左右する、先進国に有利な非人道的経済計画が決議される予定だった。
 事情を知らずゲストの一人として招かれていたロベルト・サルス修道士(=トニ・セルヴィッロ) は、会議前夜にダニエルの自室に呼ばれ、ダニエルから告解の儀式を乞われる。が、正直な罪の告白を拒むダニエルに告解は不可能だった。サルス修道士が退室した後で、ダニエルは自殺する。
 ダニエルの死に驚き、あわてふためき、自国と世界経済への影響に心奪われる各国の要人やエコノミストたち。船頭を失った会議の行く先を危ぶむ彼らは、サルス修道士に前夜の告解の内容を問い詰める。

 ハイブロウな伝統的ヨーロッパ映画の粋が集められた映画である。
 美しい映像、洒落た会話、小難しく哲学的なプロット、クラシックBGM、重厚な役者の演技、見事な建築や庭園や家具調度、地中海の明るい陽射し、淡々と流れる時間・・・。ヴィスコンティやダニエル・シュミットやエリック・ロメールやアンジェイ・ワイダやルイス・ブニュエルといった往年の巨匠達に連ねるような芸術の香気を感じる。
 社会派ミステリーと名は打ってあるが、実際には宗教的風刺映画とでもいった内容である。清貧と祈りに生きるサルス修道士と、富と権力に振り回される政治家やエコノミストたちとの対立を描き、後者を風刺する。

 修道士を演じるトニ・セルヴィッロの存在感たっぷりの滋味深い演技がはんぱない。この演技を味わうために、また一度ではよく分からなかったプロットを再確認するために、早送りなしに2度観てしまった。その甲斐はある。

 エクソシストの流行といい、ヨーロッパは神に回帰し始めているのだろうか。


評価:★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損