2016年アメリカ、ドイツ
114分


 ネットを利用する以上、自らの発信した情報がどこかの誰かがその気になれば容易に収集も盗み読みもできるであろうし、漏洩も悪用もできるであろうことは、ある程度覚悟しなければなるまい。
 携帯電話で話した相手先や会話内容、メールやLINEの送受信履歴やテキスト、サイトの閲覧履歴や検索ワード、クレジットカードをはじめとする様々な暗証番号、買い物した物や借りたビデオの履歴、むろん自らの位置情報もバレバレである。

 ネットばかりでない。店舗や駅や列車内や公共施設や通りに据え付けられた監視カメラによって毎日のように姿が撮影されているであろうし、部屋の中には盗聴器が仕掛けられているかもしれない。

 あまり考えると被害妄想になりかねないので、ソルティは適当なところで自分を誤魔化しているわけだが、いつの間にやら日本も監視社会となってしまった。
 少なくとも監視可能社会に。


監視カメラ


 インターネットが登場した時から、このような社会が到来するのは時間の問題と思っていた。
 その意味では、このドキュメンタリーというかスノーデン事件は起こるべくして起こった事件という感が強い。

 2013年、元CIA職員のエドワード・スノーデンが、NSA(国家安全保障局)による無軌道な個人通信データ収集の実態を顔と名前を出して告発し、国家による国民の言動監視およびプライバシー侵害を訴え、一大スキャンダルとなった。
 本作は、その全貌を追ったドキュメンタリーである。
 『セックスと嘘とビデオテープ』のスティーブン・ソダーバーグ監督が制作に関わっている。

 国民の自由を守るためにすべてを捨てる覚悟で内部告発した青年が、国家から非愛国者として訴えられ、亡命を余儀なくされ、今もロシアで身を潜めて暮らしている。


 国家はいったい誰を何から守っているのだろう?

 もちろん、アメリカだけの話ではない。
 防衛と防犯という錦の旗のもと、マスメディアを利用し国民の恐怖をあおりながら、民意を得て、どの国の権力者だって好きなように情報統制し得る。

 背筋が寒くなる実録ホラーである。

 


評価:★★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損