1983年松竹
128分

脚本 木下惠介、山田太一
音楽 木下忠司
出演 加藤剛、十朱幸代、大竹しのぶ、山口崇、淡島千景

 長崎の原爆被害の凄まじさ、反戦・平和への強い願い、そして家族の絆を描いたノンフィクションである。原作は1948年に発表されベストセラーとなった永井隆の同名エッセイ。永井は旧制長崎医科大学(現在の長崎大学医学部)の医師&研究者であり、原爆で妻を失い、自らも数年後に被爆死した。

 80年代に木下監督がこのような骨太のパッションあふれる映画を撮っていたことに驚かされた。このとき齢71、なんという体力、なんという意志力!
 これは反戦映画の金字塔と言っていい。すべての日本人に、いや全世界の人に観てほしいと願うたぐいの映画である。投下直後の爆心地を写実的に描いたラストシーンは、地獄の黙示録と言うに、あるいは慟哭のレクイエム(鎮魂歌)と言うにふさわしい。

長崎
現代の長崎


 往年の大女優淡島千景が祖母役で出演している。若すぎる容姿の祖母ではあるものの、存在感あふれる凛とした演技はさすがである。一家の要として、物語の要として、映画全体を引き締めている。
 当時25歳の大竹しのぶ、出番は多くないが印象に残る達者で可憐な演技。
 もっとも素晴らしいのは、永井隆(=加藤剛)の息子誠一役の少年。中林正智という名前だが、木下監督いったいどこから見つけてきたのか? 爽やかで伸び伸びした少年らしいたたずまいが、暗く重くなりがちなストーリーに希望をもたらしている。陰の主役はこの子であろう。中林はいまも役者をやっているらしい。そのうちブレイクするといいな。

 74年前の今日に思いを馳せて――


評価:★★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損