1979年松竹
143分

原作 川口松太郎
音楽 芥川也寸志

 『空海』(真言宗)、『親鸞 白い道』(浄土真宗)、『禅 ZEN』(曹洞宗・道元)と宗祖を描いた伝記映画をこれまで観てきた。
 あとはウド鈴木が主役を演じた『一遍上人』(2015年)を残すのみか。
 最澄や栄西は地味なためか、映画にはなっていないようだ。

 日蓮についてはよく知らなかった。
 千葉の房総半島の先にある鴨川生まれということも、最近知った。
 日蓮宗のお寺が最も多く、おそらく信徒が最も多いのも、東京を除けば千葉県であろうということも・・・。
 他宗派排撃の独善的イメージ、創価学会がらみの内紛イメージがあったので、あまり興味を持たなかったのである。 
 もちろん、「南無妙法蓮華経」というお題目は知っていた。

 教義や理念あるいは教団の体質はともかく、一人の人間としてみた場合、日蓮は興味深く、面白く、偉大な人物であるのは間違いない。
 その波乱万丈の生涯とたび重なる迫害にめげない不屈の精神は、空海や親鸞に負けず劣らず、大作映画になるだけの十分なドラマ性がある。
 名匠中村登の確かな演出と、豪華キャストを得て、見ごたえ十分であった。
  
 日蓮を演じる萬屋錦之介が圧巻。
 出家寺(天台宗)を追われ日蓮を名乗るようになった30歳から、武蔵国池上郷(現在の東京都大田区池上本門寺)で61歳で亡くなるまでを、圧倒的風格と歌舞伎役者の家系ならではの大向こうをうならせる外連味たっぷりの芝居で魅せてくれる。
 当然、年を取るにつれて外見は老けていくのだが、深まっていく思想や固まっていく信仰、いや増していく貫禄といった内面上の変化を、しっかりと外見上に反映させる演技の質は相当なものである。
 ソルティは子供のころに見たテレビドラマの『子連れ狼』(1973-1976)と『破れ傘刀舟 悪人狩り』(1974-1977)でしか、この役者を知らなかった。
 子供心にも他の役者にはない凄みは感じていたが、やはり名優であったか。
 
 日蓮の一番弟子の日照を実の弟の中村嘉葎雄、二番弟子の日朗を実の甥の中村光輝(現・三代目中村又五郎)が演じているのも一興。
 チームワーク抜群。

 執権北條時頼を市川染五郎 (現・二代目松本白鸚)が、北條時宗を松方弘樹が演じている。
 どちらも凛々しくて超ハンサム!

 他にも、田村高廣、岸田今日子、永島敏行(ういういし~!)、田中邦衛、松坂慶子(うつくし~!)、丹波哲郎(『親鸞』、『空海』にも出ていた)、野際陽子、伊吹吾郎(濃い!)、西村晃、赤木春恵、加藤武、池上季実子、大滝秀治、嵐寛寿郎(座っているだけでサマになる!)など、絢爛たる顔ぶれ。

 「お釈迦さまが最後に説いた唯一正しい法は法華経である」という日蓮の言葉には素直にうなづけないけれど、時の権力者や他宗派からの弾圧にも屈せず、数度の流罪にも耐え抜いて、ぶれずに信念を守りぬいた日蓮の生き方には感服のほかない。



評価:★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損