1961年東宝
110分、白黒
脚本 黒澤明、菊島隆三
撮影 宮川一夫
音楽 佐藤勝

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 一匹狼の野武士が風のごとくやって来ては町の荒くれ者どもを退治して去っていくチャンバラ時代劇。
 話自体はナンセンスで面白いとは思えない。殺陣の魅力もよくわからない。かろうじてソルティが味わうことができるのは、黒澤ならではの野外セットの本物っぷりと演出の冴え、なににもまして役者の魅力である。
 
 まず、主役の三船敏郎(=三十郎)の風格と男性フェロモンがすごい。白黒フィルムから滲み出るような生(性)の息吹。しかるに、ここでの三十郎はあくまでもストイック。
 敵役の仲代達矢は、ピストル片手に、着流し姿で首にスカーフなど、あいかわらずのニヒルなハイカラぶり。
 女郎屋の業つく婆あを演じる山田五十鈴の切れっぷりも見もの。むさ苦しい男ばかりの群像劇の中で埋没することなく存在感を出している。
 東野英治郎は傍観者的立場からすべてを見守る居酒屋の主人を好演。この男優と菅井きんは、好一対の「超庶民顔」バイプレイヤーである。
 頭の軽い三枚目役の加東大介の演技も楽しい。時代劇でよく見る顔だが、これまで注目したことがなかった。
 
 古い映画を観て、これまで名を知らなかった脇役者の名演技を発見するのは大きな楽しみである。


評価:★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損