病院でのリハビリ最中に、担当の若い理学療法士がソルティの目の前ですっと腰を落とし、ヤンキー座りをした。
 その姿にいささかショックを受けた。

「ああ君、ヤンキー座りできるんだ?」
「えっ? ソルティさん、できないんですか?」
「昔からできないんだよねえ」
「そうですか。じゃあ、もとから足首固いんですね」
 
 そうなのだ。
 中学生時分、体育館の裏手でヤンキー座りしてタバコを吸っているドカンズボンでリーゼントの不良たちを見たときに、怖さと共に抱いたのは、「よく、あんな座り方できるなあ~」という感心であった。
 家に帰ってマネしてみたが、足の裏をべったり地面につけて座ろうとすると、どうしても後ろにひっくり返ってしまう。
 足首が曲がらないので、上体が乗せられないのだ。
「ああ、自分は不良にはなれないのだな」と思ったものである。

ヤンキー座り

 いったい日本人の何パーセントがヤンキー座りできるのだろう?
 ネットで調べてみたら、「日本人を含むアジア人はできる人が多く、アメリカ人は9割方できない」と書いてある記事を見つけた。「便所座り」あるいは「うんこ座り」という別の言い方が示す通り、和式トイレで育ったか、洋式トイレで育ったかにも関係あるらしい。(だとすれば、最近の日本の若者はできない率が高いはずである)
 成人するまでソルティの家はずっと和式だった。
 けれど、ソルティにはできない。和式トイレでしゃがむときは、かかとが浮く。
 欧米か!

 この座り方、欧米では「アジアン・スクワット」と呼ばれているらしい。
 足首の可動域を広げるのに四苦八苦している最中であるが、この際、アジアン・スクワットができるようになるまで頑張ってみようか。