1990年アメリカ
83分

 実在したアメリカの連続殺人鬼、ヘンリー・リー・ルーカス(1936-2001)を描いたホラードキュメンタリー。
 トマス・ハリス著『羊たちの沈黙』に登場するハンニバル・レクター博士のモデルの一人と言われる。

 ヘンリーは、実の母親を含め、300人以上を殺した。
 女性を憎み、とくに娼婦を標的とすることが多かった。
 「女は存在する必要がない。だから見つければ全て殺す」と言ったとか。

 こういったシリアルキラーは、一般にサイコパス(精神病質者)とみなされることが多い。
 『黒い家』や『悪の教典』など、日本でもサイコパスが登場するフィクションが昨今人気である。
 ウィキによれば、「サイコパスの主な特徴は、極端な冷酷さ・無慈悲・エゴイズム・感情の欠如・結果至上主義」だそうだが、その原因についてははっきりと分かっていないようだ。
 遺伝や脳機能障害などの先天的要因と、幼少期の虐待や成育環境などの後天的要因との複合――といったあたりが、説明としては無難なのかもしれない。

 ヘンリーの場合、後天的要因がかなり大きいようだ。
 幼少時、娼婦だった母親から受けた手酷い虐待によって生まれたひずみが、長じてから性欲の高まりとともに、負の形で暴発したように思われる。 
 だからと言って、罪が免れるわけではまったくないが・・・・・。(死刑囚ヘンリーは獄中で亡くなった)

孤独なテディベア

 
 本日(3/16)、横浜地裁は、植松聖に死刑を言い渡した。
 2016年7月に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた大量殺人傷害事件の加害者である。

 事件以降、いろいろなメディアで、植松聖の生い立ちや近所の評判、学校時代の同級生の証言などの記事を目にしたが、これほど加害者の成育環境と実際の事件の残虐さとが乖離している印象を受けるケースも珍しい気がする。
 大麻の影響とか、障害者に対する差別意識とか、事件の要因となったものはいろいろ考えられると思う。
 が、ここまで常軌を逸した破壊行動を起こすのは、幼少期によほど酷い虐待があったのだろうと推測せざるを得ない。

 ところが、報道を見た限りに過ぎないが、植松聖はそれほど悲惨な幼少時代を送ったというわけでも、虐待家庭に育ったというわけでもなさそうなので、奇異な印象を受けるのである。
 であるなら、先天的要因、あるいは精神分裂病などの病気を疑わざるを得ない。
 あるいは、憑依現象とか。
 だからと言って、罪が免れるわけではまったくないが・・・・・。

 死刑判決の日にこの映画を観たのはまったくの偶然である。
 映画自体は、残酷なシーンが盛り沢山で、しかもそれをノンフィクションと知りながら観ることになるので、おすすめできない。
 

おすすめ度 :

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損