2019年アメリカ
116分
デビュー作『ゲット・アウト』で脚光を浴びた黒人監督ジョーダン・ピールの2作目。
何不自由なく幸福に暮らす黒人一家に、突如として襲いかかる恐怖を描くSFホラーサスペンス。
前作同様、身も凍るような奇抜な発想(=設定)が根幹にあるが、その発想の特徴は個人のアイデンティティを直撃するところにある。
その意味では、『ブレードランナー』(1982)、『トータル・リコール』(1990)、『ペイチェック 消された記憶』(2003)、『アジャストメント』(2011)など、映画化されたフィリップ・K・ディックの作品世界に通じるものがある。
そのうえで、黒人監督ならではの視点と思えるのが、格差社会に対する批判であろう。
地上社会をクローン化した地下社会という、文字通りの上下関係によって描き出される搾取と抑圧の構造は、『ジョーカー』のそれ同様、グロテスクなまでに“現実社会的”である。
アイデンティティ不安と格差社会。
きわめて今日的なテーマを取り上げて、過去の名作映画へのオマージュシーンに見られるように、勉強熱心で冴えた演出力でもってエンターテインメントに仕上げているところに、この監督の成功の秘訣はありそうだ。
おすすめ度 : ★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損