1997年フランス・イタリア・ドイツ合作
200分

 1954年にイギリス作家サマセット・モームは「世界の十大小説」を発表した。
  1. ヘンリー・フィールディング『トム・ジョーンズ』、1749年イギリス 
  2. ジェイン・オースティン『高慢と偏見』、1813年イギリス 
  3. スタンダール『赤と黒』、1830年フランス 
  4. オノレ・ド・バルザック『ゴリオ爺さん』、1835年フランス 
  5. チャールズ・ディッケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』、1850年イギリス 
  6. ギュスターヴ・フロベール『ボヴァリー夫人』、1856年フランス 
  7. ハーマン・メルヴィル『白鯨』、1851年アメリカ 
  8. エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、1847年イギリス 
  9. フョードル・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』、1879年ロシア 
  10. レフ・トルストイ『戦争と平和』、1869年ロシア
 欧米ものばかりに偏っているのが解せない。
 たとえば、アーサー・ウェイリーによって1933年には英訳されていた『源氏物語』や、1936年に出版されたマーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』が入っていないのは、個人的には不可解かつ不愉快である。

 ともあれ、ソルティはこの中で、1と4と7が未読。
 他の作品もおおむね20代までの青臭い頃に読んでいるので、人間関係の機微など汲み取りようもなく、深く理解して読んだとは到底言いかねる。
 今後、古典作品を読み直していきたいと思っている。
 その点で、長くなった老後には意味があろう。

 『赤と黒』のフランス文学における地位は、日本文学における『源氏物語』みたいなものだろうか。
 映画では、美男の貴公子ジェラール・フィリップが主役のジュリアン・ソレルを演じた、1954年版が有名である(ソルティ未見)。
 たしか、「赤」は軍服を意味し、「黒」は僧服を意味するのではなかったか?

 美しい人妻と、若く野心的な青年の道ならぬ恋を描いた話である。
 この種のテーマはフランス文学のお家芸みたいなもので、すぐに思いつくだけでも、『ボヴァリー夫人』、『クレーヴの奥方』、『椿姫』、『アドルフ』、『エマニエル夫人』などが上がる。(最後のはちがう?)
 おそらくそのルーツをたどると、『トリスタンとイゾルデ』に代表されるような中世騎士道における王妃への敬愛の念あたりにあるのだろう。
 さらに、そのまたルーツをたどれば、聖霊の妻たる聖母マリアに対する信仰か?
 
 本作はテレビドラマとして制作されたものだが、映画と言っても通るくらい、野外ロケも屋内ロケもセットも美術も撮影もカメラも演出も、すべてにわたって丁寧かつ贅沢にできていて、見ごたえがある。
 ジュリアン役のキム・ロッシ・スチュアートは、まさにフランス美青年。すらりとした体型と翳りある眼差しが魅力で、恋と野心で身を滅ぼす孤独で生真面目な青年を熱演。
 不倫相手のレーナル夫人役は、シャネルのモデルを務めていたこともあるキャロル・ブーケ。まさにクールビューティという言葉がぴったりの、彫像のような醒めた美貌の持ち主。ダニエル・シュミット監督『デ・ジャ・ヴュ』(1987)で見せた神秘的な美しさが記憶に強い。
 当然、二人のラブシーンがたびたび出てくるのだが、残念ながらそこはテレビドラマのことゆえ、エロチックには欠ける。
 
 ナポレオンが失墜したあとの19世紀初期フランスが舞台で、コスチュームプレイ(時代劇)としても十分楽しめる。
 個人的には、このような大仰で激しい恋愛ドラマには辟易するが・・・。


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キム・ロッシ・スチュアートとキャロル・ブーケ



おすすめ度 : ★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損