2013年角川書店

 タイトルといい、表紙絵といい、ベタなまでの少女趣味に、図書館のカウンターに持っていくのが、オジサンちょっと恥ずかしかった。
 装画は、北沢平祐というイラストレーターによる。
 カラフルで柔らかいタッチの絵を描く人である。

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 一条天皇の妃であった中宮定子の晩年の数年間を、女房として仕えた清少納言が物語る、半分ノンフィクション、半分フィクションの伝記といったところ。
 別記事『枕草子のたくらみ』に見たように、『枕草子』だけを読んでいては分からない、当時の凄まじい政争や、一時は頂点を極めながらも藤原道長に蹴落とされ転落していく定子一家の受難や、その嵐の中で凛と気高く生きて王朝最高の「華」を咲かせた定子の生きざまが、史実を踏まえながら、そこに『枕草子』の記述や「我こそは中宮の番人」と自負する清少納言のモノローグを編みこむようにして語られていく。
 冲方丁(うぶかたとう)の本はこれがはじめてだが、非常に巧みな、力ある書き手という印象を持った。

 『枕草子』の有名な段である「香炉峰の雪」、「九品蓮台」、「すさまじきもの(除目の話)」などを、ストーリーにうまく組み込んでドラマを盛り立てる手腕が鮮やか。
 平安風俗や宮中行事など煩瑣な注釈が必要となりそうな事柄を、簡潔にわかりやすく、よどむところなく伝える文章力もすばらしい。

 ここでもまた、定子への尽きせぬ愛が『枕草子』誕生の最大のモチベーションとなっている。
 同性からこれほど慕われた女君が、日本の歴史上、ほかにいるだろうか。
 定子サロンって、ある意味、宝塚に近かったのかも。
 そう思うと、一昔前の少女漫画のようなベタなタイトルと表紙絵も腑に落ちる。



おすすめ度 :★★★★ 

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損