2007年原著
2008年学習研究社より邦訳発行(田中真知訳)

 「転生者」で「オンム・セティ」で「古代エジプト」!
 これでもかというくらいにオカルティックなワード炸裂で怪しさフンプン。
 表紙もまた来てる。
 ピラミッドに、オベリスクに、古代ファラオ(アクエンアテン)の像に、ジプシーっぽい風貌の老婆の写真。
 スピリチュアル好きのソルティもさすがに手を出しかねるベタさ。
 図書館のスピリチュアル本コーナーで見かけていたのだが、これまで敬遠していた。


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 先日、酷暑で朦朧としていたためか、あるいはなにかのお告げか、手に取ってよくよく見ると、副題にこうあった。
 「3000年前の記憶をもった考古学者がいた!」
 ただのスピリチュアル本ではなくて、実在したプロのエジプト学者の伝記だったのである!
 彼女の名前がオンム・セティ(1904-1981)
 知らなかった。

 なぜ考古学者の伝記がスピリチュアル本コーナーにあるかと言えば、実際に彼女が3000年前の古代エジプトの記憶をもつ転生者だったからである。
 少なくとも本人はそれを確信していたし、彼女のもっとも親しい友人であり生前の彼女から日記を託されていた著者のハニー・エル・ゼイニも、それを前提に本書を書いている。

 オンム・セティとは誰か?

 おもての顔は、英国に生まれ育ったイギリス人女性であり、しっかりと訓練され知識と技術を身につけた一流の考古学者であり、観光客にすぐれて人気あるエジプト遺跡の案内者であり、エジプト人と結婚し一児の母となるも離婚し、その後は亡くなるまで独身を通した一女性である。
 奇抜で型破りなところはあるものの、生まれついての意志の強さと率直さ、強い正義感と行動力、考古学者に必須な飽くなき好奇心と想像力と熱意とを兼ね備えた類まれなる人物である。

 うらの顔――生前の彼女が著者以外の人間に秘して語らず、この書が出るまで世間に隠されていたもう一つの顔が、古代エジプトの神殿に仕えた巫女の生まれ変わりであり、時のファラオ(王)セティ一世の愛人。しかも、夜ごとに、3000年前からよみがえったセティ一世の霊(?)の訪問を受けていた神秘体験の持ち主だったのである。
 なんと面白い!

 本書の読みどころは三つある。

 一つは、オンム・セティ(本名ドロシー・ルイーズ・イーディー)の波乱に満ちた不思議な生涯、破天荒で純粋で情熱たっぷりな人柄に触れること。
 世間体や常識にとらわれず、自らの信じるところ、感じるところにあくまでも忠実に生きるその姿は、読む者に勇気を与えてくれよう。

 一つは、スピリチュアル的興味。
 ドロシーが自らが古代エジプトの巫女の生まれ変わりと知ることになったいきさつや、彼女の身の回りに起こる神秘体験の数々、夜ごとのセティ一世との官能的な交流の様子、動物(コブラやサソリさえも!)と意志疎通したり、古代エジプトの魔術を用いて病人を癒す異能ぶりなどにワクワクする。

 最後の一つは、オンム・セティの専門領域である古代エジプト文明に関わる様々な謎、とくに彼女の魂の故郷であるセティ一世神殿をめぐる謎に迫ること。
 それも、現代考古学の科学的な手段によるだけでなく、彼女の前世の記憶やセティ一世の霊を通して伝えられた情報という、学会がまともに取り上げるをよしとしないリソースをもとに迫る。
(オンム・セティが生前その存在を予言していた遺跡が、彼女の亡くなった後に発見され、存在が確かめられている)

 あるいはいま一つ、「3000年の時を超えて結ばれた真実の愛」といったハーレクインロマンス的な(『王家の紋章』的な?)読み方もありかもしれない。 
 
 いずれにせよ、この物語は映画になったら絶対に面白かろう。
 古代エジプトと、20世紀の英国とエジプトとの、二つの時代をヒロインがいったり来たりする。
 彼女はもう一人のドロシーなのだ。

エメラルド宮殿
エメラルド宮殿@「オズの魔法使い」



おすすめ度 : ★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損