2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。
【高知県】
浦戸大橋
浦戸湾と土佐湾の境に立つ全長1480 m、高さ50 mの巨橋
高所恐怖症の人はまず渡れない
高所恐怖症の人はまず渡れない
歩道幅が75センチしかなく、前方から来た人とすれ違うのが大変だった
桂浜より土佐湾を望む
坂本龍馬が愛した月の名所、桂浜
桂浜はへんろ道からはやや逸れる
が、やはり土佐に来たらこの方に挨拶しなければ
いかんぜよ!
が、やはり土佐に来たらこの方に挨拶しなければ
いかんぜよ!
33番札所: 高福山 雪渓寺 (こうふくざん せっけいじ)
かかる田舎に あるぞ悲しき
御本尊: 薬師如来
本歌 : 旅の道 うえしも今は高福寺 のちのたのしみ 有明の月
コメント: 寺の駐車場の張り紙に「車上荒らしに注意」とあった。また、寺からそう遠くない道ばたで、自転車泥棒に遭って(しかも2回目!)途方に暮れている70歳くらいの女性と出会った。周囲はのどかな里山風景。悪い奴はどこにでもいるもんだ。ご婦人を慰めつつ気を引き締めた。【次の札所まで6.3㌔】
34番札所: 本尾山 種間寺 (もとおざん たねまじ)
アイスクリンを 舐める楽しさ
御本尊: 薬師如来
本歌 : 世の中に まける五穀のたねま寺 深き如来の 大悲なりけり
コメント: 田畑が広がる昔ながらの日本の平和な秋景色に心なごむ。遍路友だちは、「ここがもっとも印象に残っている」と言っていたが、それも納得。境内には氷菓の販売スタンドがあった。高知名物アイスクリンを初めて口にした。砂糖、卵、脱脂粉乳、バナナ香料等で作られる懐かしい味の氷菓子で、喉の渇きをいやすのにもってこい。高知の10月は暑い。【次の札所まで9.8㌔】
種間寺
駐車場の脇に売店が見える
仁淀川の土手を行く
前方に仁淀川大橋が見える
あれを渡って、高知市さらば、土佐市こんちは!
あれを渡って、高知市さらば、土佐市こんちは!
弥勒大明神(いびらの神様)
仁淀川大橋を渡ったところにある
いびらとはイボのこと
イボ(体内の腫瘍を含む)を取ってくれる神様として篤い信仰を集める
畑中に突如出現するお城
家屋? ラブホ? なにかの記念館? サリーちゃんの家?
(確認せず。知っている人いたら教えてください)
家屋? ラブホ? なにかの記念館? サリーちゃんの家?
(確認せず。知っている人いたら教えてください)
35番札所: 医王山 清滝寺 (いおうざん きよたきじ)
真如皇子は 天竺目指す
御本尊: 薬師如来
本歌 : 澄む水を 汲めば心の清滝寺 波の花散る 岩の羽衣
コメント: 山の中腹にあるお寺。石段途中にある仁王門の天井には、見事な龍が描かれている。境内には、薬師如来像がデンと立つほか、平城天皇の第三皇子であった高丘親王(出家名:真如)の逆修塔がある。逆修塔とは生きているうちに建てる墓のこと。親王は、真の仏法を求め、齢六十にして決死の覚悟でインドに旅立った。【次の札所まで13.9㌔】
36番札所: 独鈷山 青龍寺 (とっこざん しょうりゅうじ)
この石段で 稽古積みしか
御本尊: 波切不動明王
本歌 : わづかなる 泉にすめる青龍は 仏法守護の ちかいとぞ聞く
コメント: 雲ひとつない空の下、輝く宇佐湾を左手に見ながら目くるめく高さの宇佐大橋を渡る。まさに気宇壮大。浜辺でドッジボールしている高校生(明徳義塾か)の姿がまぶしかった。元横綱・朝青龍は、高校時代にこの寺の石段でトレーニングを積んだそうな。【次の札所まで25.3㌔】
別格5番札所: 高野山・八幡山 大善寺(こうやさん・やはたやま だいぜんじ)
涅槃へ渡る ワープかと見ゆ
御本尊: 弘法大師
本歌 : みな人の 善を須崎の 高野寺 波の音さえ 法の声かな
コメント: 浦ノ内湾で巡行船に乗り、湾をほぼ半周する7キロ近いへんろ道をワープする。32番札所で知り合ったTさんらと同乗した。Tさん曰く、「これは歩き遍路のルール範囲内」(笑) ソルティ「船の中で足踏みしていればいいんじゃないですか?」などと冗談を言ったのを思い出す。【次の札所まで33.2㌔】
大善寺大師堂
境内からの眺め
中土佐町久礼(くれ)の大正町市場
この町は青柳裕介の漫画『土佐の一本釣り』の舞台である
この町は青柳裕介の漫画『土佐の一本釣り』の舞台である
ちなみに、大正4年当時の大卒者の初任給は35円
七子峠より土佐湾を望む
山間を高知自動車道が走る
峠を下りてから37番まではJR土讃線沿いをゆく
37番札所: 藤井山 岩本寺 (ふじいさん いわもとじ)
勤行中の モンロー探し
御本尊: 不動明王 観世音菩薩 阿弥陀如来 薬師如来 地蔵菩薩
本歌 : 六のちり 五つの社あらわして 深き仁井田の 神のたのしみ
コメント: 足摺岬に至る区間最長距離(80.7キロ)を前に、遍路たちが体調を整え、情報を交換し、励まし合う札所である。本堂内陣の格(ごう)天井には全国から応募があった575枚の絵画が飾られ、曼荼羅のような色彩美は眼福もの。マリリン・モンローがどこかにいるらしい。ここでは宿坊に泊まり、早朝の勤行に参加した。眠い・・・。【次の札所まで80.7㌔】
次回予告!
いよいよ足摺岬に到達‼