2017年中国
119分

 中国発の上質で濃厚なフィルム・ノワール(犯罪映画)。
 東京国際映画祭で芸術貢献賞および最優秀男優賞を受賞するなど、評価も高い。
 
 観ていて想起したのは、なんと、成瀬巳喜男監督『浮雲』(1955)であった。
 90年代末の中国の田舎町を舞台にしたフィルム・ノワールと、50年代日本の離島のやさぐれた男女の恋愛物語をつなぐものはなにか?

 雨、である。

 とにかく、最初から最後まで雨が降っている。
 遠雷が鳴り響いている。
 道がぬかるんでいる。
 登場人物たちはぐっしょり濡れている。

 この映画の本当の主役は間違いなく「雨」である。
 画面に、そして物語全体に、陰鬱さと閉塞感と沈滞と救い難さをもたらす「雨」の自然な演技こそ、特筆すべき点である。
 これが、ピーカンの日々のもとに同じ物語が進行したとするなら、ここまで陰影豊かな作品にはならなかったであろう。
 そこが、成瀬の傑作と共通しているのだ。

 連続殺人事件の犯人を追うというテーマゆえ、ミステリーあるいはサスペンスに分類されて然るべき作品ではあるが、本質はアラン・ドロンの『太陽がいっぱい』同様、上昇志向をもった青年ユイ(=ドアン・イーホン)の挫折と絶望の物語であり、苦い人生のドラマである。

 いや、ユイのみならず、登場人物の誰もが閉塞感と絶望のうちにある。
 これが香港返還に湧く90年代末の中国の真実の姿だったのだろうか?
 つい天安門事件(1987)を思い起こすことになった。


tiananmen-square-965028_1920
clarkelzによるPixabayからの画像


おすすめ度 : ★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損