2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
 各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
 ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。


【愛媛県】


54への道(瀬戸内海1)
松山~今治間は瀬戸内海を左に見ながら歩く
高知の海岸風景といかに違うことか!
車も多い


54への道(瀬戸内海4)



54への道(瀬戸内海2)



54への道(鹿島)
伊予北条の鹿島(かしま)
「伊予の江の島」と呼ばれる

54への道(鹿島2)
周囲1.5km、標高113.8m
鹿島の野生シカは愛媛県指定の天然記念物に指定されている


54への道(子規マンホール)
マンホールにも鹿島が刻まれていた
粟井坂もこのあたりの地名


54への道(鎌大師付近)
鎌大師付近の峠
子規の句の通り、涼しい風にしばし吹かれた


54への道(瀬戸内海3)


54への道(菊間の瓦)
菊間町は瓦の生産で有名


54への道(太陽石油1)
前方に宇宙都市を発見
なんだあれは?


54への道(太陽石油2)
太陽石油の製油所だった
創業者の青木繁吉は高知出身


54への道(伊予亀岡の菊)
伊予亀岡の接待菊


54への道(星の浦海浜公園)
星の浦海浜公園
ドックの向こうに芸予諸島が見える
54への道(ようこそ今治へ)
行き交う東南アジア系の外人の多さにびっくり
タオル工場の従業員だろう


54番延命寺参道
54番延命寺山門に到着



54番札所: 近見山 延命寺 (ちかみざん えんめいじ)

54番
 延々と 続く海辺の道なれば
 命懸けずに のんびり歩け

御本尊: 不動明王
本歌 : くもりなき 鏡の縁とながむれば 残さず影をうつすものかな
コメント: 53番(松山)から54番(今治)までの34.4㎞をえらく長く感じたのは、風邪をひいて疲れていたから。瀬戸の海の透き通る青さがなければ、さらにきつく感じただろう。このあたりでへたばる遍路は多いらしく、境内では三坂峠(45~46番)で出会った看護師がベンチでのびていた。
【次の札所まで3.4㌔】



54番延命寺本堂
本堂


伊予一宮別宮神社鳥居
伊予別宮・大山祇(おおやまつみ)神社
別宮とは、本社の『わけみや』という意で本社についで尊いお宮。
伊予一宮本社は瀬戸内海の大三島にある。

伊予一宮別宮神社
さすがに大三島まで渡るのはきついので
別宮で御朱印をいただいた。
祭神の大山積大神はアマテラスの兄という。


IMG_20200904_105943



55番札所: 別宮山 南光坊 (べっくざん なんこうぼう)

55番
 今治の 東西南北 睨みつけ
 光放つや 天部の神は

御本尊: 大通智勝如来
本歌 : このところ 三島に夢のさめぬれば 別宮とても 同じすいじゃく
コメント: 一般に仁王像が置かれることの多い山門に、四方を護る四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)がいるのが珍しかった。境内の東屋でまた看護師と遭遇。いつの間に抜かれたのか? 疲れ切った表情で眠りこけていた。そう、彼は寝袋(野宿)組であった。起こすのも可哀想なので、そのまま別れた。
【次の札所まで3.0㌔】

55番南光坊
山門


55番南光坊持国天


55番南光坊増長天


55番南光坊広目天


55番南光坊多聞天


今治駅
今治駅
数日前に国際的なサイクリングの大会があった
サーフィン、ラフティング、サイクリング・・・
四国のアスレチックぶりに驚く


56への道(かつや)
56番へ行く途中のとんかつやで昼食



56番札所: 金輪山 泰山寺 (きんりんざん たいさんじ)

56番
 テーブルを 占拠する身の やましさに
 早たいさんす 荷物かついで

御本尊: 地蔵菩薩
本歌 : みな人の まいりてやがて泰山寺 来世の引導 たのみおきつつ
コメント: 風邪と11月初めとは思えない強い日射しとでグロッキー寸前。精をつけるため、へんろ道沿いにあったチェーンのとんかつやに入った。日曜のこととて家族連れで賑わう中、杖に笠に頭陀袋、大きなリュックを背負った遍路姿の自分。ひとり異質であった。もっとも、現地の人は見慣れているのだろうが。
【次の札所まで3.1㌔】



56番泰山寺1
泰山寺



57番札所: 府頭山 栄福寺 (ふとうざん えいふくじ)

57番
 ここがまあ「ボクは坊さん。」 栄福寺
 思いがけぬも 閑かなるかな

御本尊: 阿弥陀如来
本歌 : この世には 弓矢を守る八幡なり 来世は人を 救う弥陀仏
コメント: 映画にもなった『ボクは坊さん。』(2010年ミシマ社)の著者、白川密成が住職をつとめるお寺。森と池に囲まれた静かで地味なたたずまいは好感が持てた。納経所の人の対応も良かった。
【次の札所まで2.4㌔】




57番栄福寺1
境内


57番栄福寺2
境内にあった掲示板


58への道
58番へ登る道から今治市街を見下ろす
あの高い塔、なにに見える?


58番仙遊寺山門
仙遊寺山門


58番仙遊寺石段
よくもまあ登ったものよ



58番札所: 作礼山 仙遊寺 (されいざん せんゆうじ)

58番
 千尋の 高き石段 のぼりきり
 薄暮の庭に 犬と遊べり

御本尊: 千手観音菩薩
本歌 : たちよりて 作礼の堂にやすみつつ 六字を唱え 経を読むべし
コメント: 225mの山腹にある。登る途中に見えた今治市街の景色が素晴らしかった。ひときわ高く聳え立つは今治国際ホテル(地上23階、高さ101.7m)であるが、これが一瞬、弘法大師の後ろ姿に見えた。うれしい錯覚。境内には犬がつながれて、参詣者の人気者になっていた。別格7番の山道以来、一週間ぶりにサニーさんと再会。彼女は宿坊に泊まるという。疲労困憊のソルティはややラグジュアリー(笑)なビジネスホテルに宿をとった。この種のホテルのいいところは、ハズレが少ない点である。
【次の札所まで6.1㌔】


今治国際ホテル
今治国際ホテル


58番仙遊寺境内
境内


58番仙遊寺の犬



59への道(松本バス停)
住宅街のバス停で一休み
ソルティの荷物は大概のへんろより少なく軽かった。
長年の山登り経験で、必要最小限なグッズに絞り込まれていた。



59番札所: 金光山 国分寺 (こんこうざん こくぶんじ)

59番
 国籍の 分け隔てなく 受け入れて
 大師はいます 右手差し出し

御本尊: 薬師瑠璃光如来
本歌 : 守護のため 建ててあがむる国分寺 いよいよめぐむ 薬師なりけり
コメント: この境内でフランスから来た70代くらいのご婦人と会った。なかなか日本語も達者であった。一日20㎞歩くと決めているというから、かなりのんびりペースである。フランスでは、ある女性が書いた四国遍路体験記がベストセラーとなり、それを読んで四国を訪れる人が増えたそうだ。
【次の札所まで17.3㌔】
58番国分寺境内
境内


58番国分寺七福神
お寺でよく見かける六地蔵かと思ったら七体いる
七福神であった
赤い毛糸の帽子がかわいい


58番国分寺大師像
これは名案!



四国の白地図第12回

CraftMAPの白地図を使用しています。より詳しい四国地図を見たい方は、こちら(地図蔵)を参照ください。  



次回予告
60番横峰寺に転がされました