2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
 各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
 ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。


【香川県】


81への道
左の山が81番のある白峰、右の山が82番のある青峰
真ん中にあるお城はホテルプリンセス(桃峰)


81への道(白い岩壁)
登山道脇の凝灰角礫岩(ぎょうかい・かくれきがん)の露頭
白峯の名の由来は「山深く雪がなかなか消えないから」
と言われるのだが、むしろこの岩盤の色ゆえではなかろうか



81番札所: 綾松山 白峯寺 (りょうしょうざん しろみねじ)

81番
 足音を 忍ばせ歩け 白峯の
 悲王の眠り さまたげぬよう

御本尊: 千手観世音菩薩
本歌 : 霜さむく 露白妙の 寺のうち 御名を称ふる 法のこえごえ
コメント: 白峯寺の奥まったところに崇徳上皇の陵墓はあった。ここではなぜか物音を立てるのを控えてしまう。山の紅葉の賑わいをよそに、静かに眠られているような印象をもった。京の都とは反対の方角(南西)を向いているのだが、これは祀った者の意地悪ではなくて、外敵から京を守護してもらう意図からではなかろうか? 
ここに立つと「魔王」という称号より「悲王」がふさわしい気がした。
【次の札所まで5.0㌔】


白峰寺山門
山門


白峰寺阿弥陀堂
阿弥陀堂


白峰寺霊廟への道
目立たない小径の先に・・・・・


崇徳上皇霊廟
白峯御陵
配流から9年、享年46歳


五色台子どもおもてなし処
82番へ行く途中にある五色台子どもおもてなし処
宿泊できるログハウスがある



82番札所: 青峰山 根香寺 (あおみねさん ねごろじ)

82番
 闇に棲む 鬼もお化けも 恥じ入れよ
 五色輝く ねごろ(見頃)の紅葉

御本尊: 千手観音菩薩
本歌 : 宵の間の 妙ふる霜の きえぬれば あとこそ鐘の 勧行の声
コメント: 81、82番がある五色台は香川有数の紅葉の名所。京都の名刹とくらべても遜色ない。もっとも美しかった札所として記憶に残っている。が、実はここは四国の心霊スポットとしても名高い。その昔人間を食べる恐ろしい怪獣・牛鬼が棲んでいたという伝説もある。
【次の札所まで4.6㌔】


根来寺本堂
本堂


根来寺鐘楼
鐘楼


根来寺紅葉
このタイミングでこの札所に来られるとは!


別格19への道
別格19番へ向かう下山路



別格19番札所: 宝幢山 香西寺(ほうどうざん こうざいじ)
 
19番
 こうざい(功罪)に よりてその名は 変われども
 延命するは 菩薩の功徳

ご本尊: 延命地蔵菩薩
本歌 : 南無大悲 延命地蔵 大菩薩 みちびきたまへ この世のちの世
コメント: 82番からこの寺に下る道はところどころ海が見えて気持ちいいのだが、道標が少なく、何度か迷って土地の人に尋ねた。この寺は、739年に行基が創建して以来、勝賀寺→香西寺→地福寺→高福寺→香西寺と支配者が変わるたび名前を変えられている。俗世の荒波をかいくぐってきたのだ。
【次の札所まで9.2㌔】


別格19香西寺山門
山門


別格19香西寺境内
境内


別格19香西寺納経所
納経所


飯田お遍路休憩所(鬼無駅近く)
JR予讃線・鬼無駅近くの飯田お遍路休憩所


飯田お遍路休憩所2(鬼無駅近く)
立派で贅沢なしつらいであった(なんと日本庭園もある)
ここで韓国人チュウさん(48)と出会い、83番まで同行。
スポーツ用品の会社で働いていて、休暇を利用して来たという。
英語と日本語とスマホのチャンポン会話を楽しんだ。



83番札所: 神毫山 一宮寺 (しんごうざん いちのみやじ)

83番
 別れても 姓を変えない 妻のごと
 思いのたけは いちのみやかな

御本尊: 聖観世音菩薩
本歌 : さぬき一 宮の御前に 仰ぎきて 神の心を 誰かしらいふ
コメント: 神仏習合時代は、隣りにある讃岐一宮・田村神社の別当寺であった。1679年に時の高松藩主・松平頼常によって田村神社が両部神道から唯一神道に改められたため、神社と分離された。つまり、明治初期の神仏分離より200年も早く、神仏の分離が行われたのだ。にもかかわらず、名前だけずっと昔の由来のままに残っているのが面白い。
【次の札所まで13.6㌔】


一宮寺山門
山門


一宮寺境内
境内


田村神社大鳥居
讃岐一宮・田村神社
社伝によれば、和銅2年(709年)行基によって創建された


田村神社神殿
本殿
「もう七五三だったのか!」と驚いた瞬間(11/26に参拝)
遍路中の時間感覚は特異である


田村神社赤鳥居が並ぶ
四国一宮めぐりもこれでオーラス


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高松カプセルホテル
高松ではカプセルホテルを利用
へんろ割引(3300円→1800円!)があった
ここで靴下供養をした


84への道2
84番への道(国道11号)
高松琴平電鉄志度線が走る向こうに屋島山が見える



84番札所: 南面山 屋島寺 (なんめんざん やしまじ)

84番
 やしまじに(休まずに) 登り着きたる 境内に
 不動の守護者 いし固くして

御本尊: 十一面千手観音菩薩
本歌 : あづさ弓 屋島の宮に詣でつつ 祈りをかけて 勇むもののふ
コメント:揺れる舟の上から扇の的を射抜いた那須与一の話など、源平の合戦で有名な地。屋島寺(284ⅿ)と85番八栗寺(230ⅿ)は、向かい合った山上にあって、壇ノ浦を挟む。つまり、この日は登って下りてまた登るの難路。ここまで来ると、登山のきつさは標高よりも傾斜の問題と身をもって分かってくる。札所最高峰(927m)の66番雲辺寺より、よっぽどきつかった。
【次の札所まで5.4㌔】


屋島寺本堂
本堂
開基はあの唐の名僧・鑑真和上という


屋島寺大師堂
大師堂


屋島寺狸稲荷
四国たぬきの総大将・太三郎狸を祀る蓑山大明神
太三郎は高畑勲監督の映画『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994)に登場する。
弘法大師が四国から狐を追い払ったので、狸の天下になったという言い伝えがある。


屋島寺不動明王
この石の不動明王像、妙に惹かれるものがあった


屋島寺境内
境内を後にする


壇の浦
壇ノ浦
実を言うと、平氏が滅亡した関門海峡の壇ノ浦しか知らなかった。
当地のほうは一般に「屋島の戦い」と呼ばれるようだ。
ここから壇ノ浦のふちを抜けて、向かいの五剣山に登る


85への道(道標)



85への道(須崎寺1)
洲崎寺の庭園
苔と石とで屋島の戦い(地形)を表現している


85への道(須崎寺2)




85への道(真念の墓)
ここに参らでおくものか
四国遍路の父・真念上人のお墓


85への道(真念の墓2)
結願が見えた地点に登場するのが粋である


85への道(五剣山)
八栗寺のある五剣山が迫ってくる
このあたり(牟礼)は良質の石の産地である



85番札所: 五剣山 八栗寺 (ごけんざん やくりじ)

85番
 八里九里 日々を重ねて 三百里
 四剣の山を ごけんざん(見参)する

御本尊: 聖観世音菩薩 
本歌 : 煩悩を 胸の智火にて八栗をば 修行者ならで 誰か知るべき
コメント:本道の背後に屏風のようにそびえる4つの峰がダイナミック。かつては5つあり五剣山と呼ばれたのだが、宝永3年(1706)の大地震で一つ崩れたとのこと。ここには聖天様も祀られている。聖天信仰は弘法大師が唐より持ち帰ったと言われている。
【次の札所まで6.5㌔】


八栗寺境内
境内


八栗寺聖天様
歓喜天のお堂
歓喜天(聖天様)はインドのガネーシャ(象の神様)が起源
大日如来の化身とされ、密教では重要な神様である。


八栗寺四剣山
間近に仰ぎ見る四剣山は迫力満点!
長野の戸隠神社の天岩戸の扉を想起した。




四国の白地図第18回


CraftMAPの白地図を使用しています。より詳しい四国地図を見たい方は、こちら(地図蔵)を参照ください。  



次回予告
・・・・・結願です。