2020年大和書房
ニュースや天気予報くらいしかテレビを観ることのないソルティであるが、たまに池上彰がキャスターをつとめる報道バラエティ番組(とでも言うのか)は観る。
時事問題を堅苦しくない切り口で、非常にわかりやすく解説してくれるので、観た後になんとなく賢くなったような気がする。
本人がどういう思想や立場の人なのかは知らないが、少なくとも番組上では、本人の主義主張を開示しパネラーや視聴者に押し付けるようなところがないのも、つまり本人はあくまでも鳥瞰的立場にとどまっているところも、観ていて疲れない理由であろう。
あんな忙しい人がいったい本など書く暇があるのだろうかと思うが、本書は2019年夏に関西学院大学で行った講義録がもとになっているとのこと。
学生対象の基礎講座なので、これまたわかりやすいことこの上ない。
ソルティは昔から時事問題とくに政治経済や国際情勢にあまり関心がない。関心が持てない。
どうせ昔ながらの権力闘争、領土と資源をめぐる争奪戦、宗教や民族問題の絡んだジェノサイドや紛争、単純に言えば、金と女と名声と権威を欲するオヤジたちの陣取り合戦――といったイメージがあるからだ。
だが、自分もまたその世界の片隅に生きていて、日々少なからぬ影響を受けているので、たまには、「今の世界情勢を抑えておこう」、「その中で日本の小市民たる自分の置かれている立場を確かめて置こう」という気になる。
で、読んでみて、相も変わらぬ世界にやっぱりうんざりすることになる。(この「うんざり」は、仏道修行のモチベーションにつながるので馬鹿にならないのだが・・・)
- トランプ大統領の誕生した背景
- イギリスのEU離脱
- 戦後の日米関係の変遷
- 沖縄基地問題のいま
- 中東問題とイスラム教
- 中国共産党の来し方と行く末
- 朝鮮半島問題 等々
まさに今の世界情勢を概観し、時事ニュースを理解するための重要なポイントが取り上げられ、わかりやすく解説されている。
NHKの記者だった池上の該博な知識と、リアリティを感じさせる“現場”のエピソードの数々に感嘆する。
それにつけても、今の中国くらい、ジョージ・オーウェルの『1984』に酷似している国は無かろう。
恐ロシア、いや震えチャイナ・・・・・
それにつけても、今の中国くらい、ジョージ・オーウェルの『1984』に酷似している国は無かろう。
恐ロシア、いや震えチャイナ・・・・・
読んでみて、ソルティが外野から生半可な知識なりにとらえていた世界の状況や見方が、それほどはずれてはいないことに気づく。
それはきっと、時事ニュースこそいちいち追っていないけれど、いろいろな国の映画をよく見てきた、よく見ているからなのだと思う。
各国の映画に映されている風土や市井の人々の生活や物語の枷となる社会的背景を理解することで、知らずその国の歴史や情勢を学んでいるのだ。
映画の場合、本や新聞やテレビやネットのニュースとは違って、遠い国の生活者の体温や息づかいや声音や表情まで伝わってくるところが特徴であろう。
教育的効果を期待して映画を観ているのでは決してないが、間違いなく映画は世界とつながる窓である。
おすすめ度 : ★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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