1933年フランス・イギリス
80分
フランス語
原作 ミゲル・デ・セルバンテス
音楽 ジャック・イベール

 主演のフョードル・シャリアピン(1873-1938)は、ロシア出身の伝説的名バス歌手。
 「歌う俳優」と呼ばれたほど、演技達者であったという。
 その名声を確かめるべく、レンタルした。

シャリアピン
シャリアピン


 なるほど、確かに凄い演技力である。
 まさに、イメージ通りのドン・キホーテがそこにいる。
 高潔で、突飛で、一途で、頭のねじの緩んだ老騎士になりきっている。
 表情から、姿恰好から、物腰から、口調から、仕草動作から、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを残す。
 むろん、その歌唱は絶品。

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ドゥルシネア姫への愛と忠誠を歌うドン・キホーテ


 そのうえにラストでは、騎士道物語の読み過ぎで頭のおかしくなった呆け老人という以上の、人間としての尊厳をも表現するに至っている。
 すなわち、ドン・キホーテという人物は、世俗を器用に生きようとする周囲の人間たちが失った“純粋さや情熱”の象徴だということを教えてくれる。
 だから、彼の死に際して、それまで彼を馬鹿にしていた周囲の人間たちは一様に頭を垂れ、涙するのである。

 シャリアピンの真価を示すこの記録が残されていることに感謝するほかない。


追記:晩年、来日して帝国ホテルに泊まった際、歯の悪かったシャリアピンのためにシェフが噛みやすいステーキを特別調理した。それがシャリアピン・ステーキとして今も愛されている。


おすすめ度 : ★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損