2014年オランダ
80分

 オランダでTV映画として制作され、放映後に大反響を巻き起こし、急遽劇場公開、またたく間に世界展開となった“ボーイズラブ”もの。
 思春期の少年のひと夏の恋の経験が、一編の美しい詩のように、高い完成度で描かれている。
 自然あふれる田舎町の瑞々しい風景、きらめく陽光と水しぶき、丁寧な心理描写、俯瞰やアオリ(仰角)や逆立ち映像などを効果的に使った演出の冴え、適度な長さ(TV映画として作られた恩恵か)。
 BL映画の古典たり得る傑作である。

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 この映画と、より最近(2019年)日本で制作・上映されたLGBT映画『アスリート』をくらべたときに、時の経過により「古びるもの」と「変わらないもの」についての考察を試みざるを得ない。
 どちらも、主人公の男(少年)が、自らの中に呼び覚まされた同性に対する恋心に困惑し、抵抗し、葛藤し、逡巡しながら受け入れていく、という点では変わらない。
 相手が同性だろうが異性だろうが、人が人を好きになるという感情や、それに付随して起こるさまざまな思いは同じである。また、世の中では多かれ少なかれ“異端視”される同性愛を、自らのものとして受け入れていく困難も、洋の東西問わず、同じである。
 こういった感情の部分は古びない。
 
 一方、登場人物が抱えるそうした感情をどう表現していくかという段階で、陳腐になったり、旧態依然であったり、斬新であったり、新しい価値観を世に送ることになったり、という違いが生じてくる。
 つまり、素材は同じでも調理法が違えば、出来上がった料理はまったく違うものになる。
 調理法とは、創作者(主として監督)の感性、世界観、価値観、人間観、思想性、世の中との距離の取り方などの反映であり、映画の場合、具体的には脚本や演出にあらわれる。
  
 この映画を「ボーイズラブもの」とくくってしまうのにいささか抵抗をおぼえるのは、これが LGBT 映画というよりも、思春期の少年の心情を描いた“普通”の映画という印象を受けるからだ。
 普遍性がある。
 そこには、「同性愛というのは別に特別なものじゃない」というミシャ監督の揺るぎない世界観があり、観る者はそこに新しい料理を発見し、飛びつくのである。(オランダではTVで放映されたという点に国民性を感じる)


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 俯瞰で描く、少年たちのはじめてのキスシーン



おすすめ度 : ★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損