1955年東宝
121分、白黒
昭和初期の大阪を舞台とする人情ドラマ。
船場の化粧品問屋のボンボン育ちのダメ男・柳吉(=森繁久彌)と、下町の芸者あがりで陽気でしっかり者の女・蝶子(=淡島千景)の切っても切れない関係を描く。
当時の船場問屋の風景、狭い路地の入り組む法善寺界隈、難波や曾根崎新地でのお座敷遊びなど、戦前の大阪の風俗ドラマとしても楽しめる。
柳吉は二枚目ではないが、女性がほうっておけないような魅力がある。外で強がっていても、飼い主の前では平気で腹を見せて寝転ぶドラ猫のような魅力というか。
それはそのまま役者としての森繁の魅力に通じているようである。
どうしようもないダメ男なのに、憎めない。
蝶子もまた、淡島千景その人をモデルにしたかのようなキャラで、役柄と演者がぴったり重なっている。といって、素顔の千景がどんな人なのか知らないが・・・・・。
あくまでイメージである。
二人のコンビネーションが凹凸しっくりなじんで、本当の夫婦(内縁だが)のように見える。
切っても切れない「ダメ男と尽くし女」。
現代人の視点からすれば、この男女関係は、成瀬巳喜男『浮雲』の主役の二人(高峰秀子と森雅之)同様、「共依存」と定義されてしまうところであろう。
現代人の視点からすれば、この男女関係は、成瀬巳喜男『浮雲』の主役の二人(高峰秀子と森雅之)同様、「共依存」と定義されてしまうところであろう。
戦後生まれの、とりわけフェミニズムの洗礼を受けた人間が見たら、ダメ男に尽くし続けて自分の人生を棒に振る蝶子のありように苛立つかもしれない。
ソルティも、浪花節的人情ドラマ(=演歌の世界)が苦手なので、こういった映画というか関係は避けてきた。
が一方、自立した近代的な男女(あるいは男男でも女女でも)が、互いの世界観をぶつけ合い駆け引きする米国TVドラマに見るような関係も、なんだか疲れる。
結局、本人たちが幸せならば、周りはとやかく言うことはない。
(それが、眞子内親王の結婚問題に対するソルティの気持ちである。30年近く不自由な暮らしに耐えてきたのだから、持参金くらいつけてあげたらいい)
文芸映画の巨匠・豊田四郎の作品を観るのはこれが初めて。
岸恵子主演の『雪国』、岡田茉莉子がお岩に扮した『四谷怪談』、同じ森繁×淡島コンビによる『花のれん』、芥川龍之介原作の『地獄変』など、観たいものが結構ある。
おすすめ度 : ★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損