1937年松竹
86分、白黒

 原作は坪田譲治の児童文学。
 戦前の岡山を舞台に、大人社会のいざこざに翻弄される兄弟の姿を描く。

 清水宏監督(1903-1966)の作品を観るのは初めて。
 ウィキによると、
 
作為的な物語、セリフ、演技、演出を極力排除する実写的精神を大事にし、「役者なんかものをいう小道具」という言葉を残している。

 子供たちを主人公とした本作は、まさに清水監督の特質が表れている作品と言えよう。
 テレビドラマにあるような、観る者の情動に訴えかけるドラマチックな演出(セリフや芝居、むろんBGM)は制限されている。
 それがかえって、登場人物たちの置かれている状況や心情を、観る者に汲み取らせる結果を生んでいる。
 観る者は、ただ漫然と受け身で画面を見るのではなく、一つ一つのカットを分析し状況を想像することで、物語の作り手として参与することになる。
 つまり、非常に“映画的”な映画なのだ。
 
 戦前の地方の町の豊かな自然、子どもたちが走り回る路地の佇まい、井戸や囲炉裏や縁側のある伝統的な家屋、街々を巡回する曲芸団、ふんどし一つで川遊びし木登りし喧嘩する子どもら。
 80年以上前の日本の風景がある。
 マスクをつけてスマホをいじりながら塾に通う今の子供たちとは雲泥の差。
 「昔はよかった」は自分にとってNGワードの一つであるが、子どもにとってどっちが幸せなのか、ふと思わざるを得ない。

 いやいや、戦争がないだけ今のほうがよいはずだ。


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主役・三平役の爆弾小僧


 三平兄弟の母親役の吉川満子、伯父さん役の坂本武が味がある。
 当時33歳の笠智衆が端役で出ているのも見逃せない。
 白い制服の似合うなかなかのイケメン巡査である。


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吉川満子と笠智衆



おすすめ度 : ★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損