1975年アメリカ、イギリス
129分
原作は『ジャングル・ブック』で有名なイギリス作家キップリングの同名小説。
壮大な中東冒険ファンタジーであり、ピカレスク(悪漢)ロマン。
アフガニスタンの辺境にあるカフィリスタンという国(架空)に行って王様になろうと試みる、2人のごろつき英国人(ショーン・コネリーとマイケル・ケイン)の物語である。
文明人が未開の土地に行って英雄なり支配者になるという点において、ピーター・オトゥール『アラビアのロレンス』やマーロン・ブランド『地獄の黙示録』と同型と言えよう。
が、そこはジョン・ヒューストンらしく(あるいはキップリングらしく?)、哲学的な重みや政治的な深みはない。
純粋に波乱万丈のエンターテインメントとして楽しめる。
ショーン・コネリーは昨年10月に90歳で亡くなった。
007シリーズの初代ジェームズ・ボンドとして有名だが、ソルティはリアルタイムで映画館で観ることはなく、小・中学生の頃もっぱらテレビ放映されたのを観ていた。
ストーリーの面白さはともかく、ジェームズ・ボンド(=ショーン・コネリー)をカッコいいと思ったことはなかった。
ショーン・コネリーは決してハンサムな俳優ではなく、どちらかと言えばいかついゴリラ顔である。
当時ソルティは、アラン・ドロンとかロバート・レッドフォードのような美形が好きだったのである。
ショーン・コネリーの良さに気づいたのは、リアルタイムで観た『薔薇の名前』(1986)からであった。
中世のストイックな修道士にして名探偵を演じたあの老け役――と言っても今思えば年相応(当時56歳)だったのか。昭和時代の50後半は今だと70歳くらいの感じかもしれない。なんと言っても磯野波平54歳だ――に接し、円熟した男の発する渋い魅力にはじめて目をひらかされた。
いや、波平の魅力ではない。
ショーン・コネリーだ。
髪が薄くなって頭皮が見えても、白い髭が生えていても、目元にしわが刻まれていても、胴回りが太くなっても、カッコいいってのはあるなあと思った。
カッコいいというより“味がある”というべきなのかもしれない。
まさにショーン・コネリーは、年を取るにつれて“味”が増していく俳優の一人だった。

薔薇の名前の1シーン
(後ろはクリスチャン・スレーター)
(後ろはクリスチャン・スレーター)
おすすめ度 : ★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損