1940年松竹
91分、白黒

 高峰三枝子が女学校の新人教師の奮闘を演じる学園ドラマ。

 たしかに小宮山信子というのが主人公の役名ではあるが、たとえば『女教師・信子』とか『女子学校』とか『女・坊ちゃん』とか『白い肌の異常な学園』(笑)とか、ほかにいくらでも内容に見合ったタイトルをつけられようが、ただ『信子』というだけなのが面白い。
 もっとも、獅子文六による原作タイトルそのままなのだが・・・・。
 獅子文六は昭和前半に活躍した小説家で、岸田國士らと共に文学座を立ち上げた人である。

 同じ高峰三枝子を女学校の教師&舎監役として据えた、木下惠介『女の園』(1954)と見比べるとたいそう興趣深い。
 『女の園』では、女子学生(高峰秀子、岸恵子ら)を規則で締め付ける冷徹無情のベテラン教師。鉄面皮の裏にはもろく悲しい女心が隠されていた。
 本作では、田舎から出てきたばかりで熊本弁が残る初々しい新米教師。寮に侵入した不審な男を投げ飛ばす熱血女子で、女子生徒の人気を集める。天海祐希を思わせる。
 14年間の高峰の演技者としての成熟が確かめられよう。
 むろん、美貌と気品は両作に通じている。

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信子役の高峰三枝子


 新人・信子をいじめ悩ませる、わがままな金持ち令嬢・エイコを演じるのは三浦光子。
 子役にしては巧いナと思ったら、本職の女優であった。
 撮影時は23歳で、1969年(52歳)に亡くなるまで100本を超える映画に出演した。
 個人的には、鑑賞後は高峰より三浦光子のほうが印象に残った。
 それと、信子の叔母さんで芸者置屋の女将を演じる飯田蝶子も味がある。

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エイコ役の三浦光子

 
 校舎内の立体感ある撮影も、ハイキングでの広がりある野外撮影も、素晴らしい。
 カメラは小津安二郎の片腕として知られた厚田雄春による。
 
 ついに同級生から袋叩きにされ、校舎内で自殺未遂を起こしたエイコ。
 学園は大騒ぎとなる。
 エイコの父親が学園最大の寄付者だからだ。
 蒼ざめた校長先生や教師たちを前に、信子は毅然と言う。
 「すべては舎監の私の責任です。私が辞職します」
 それに対するエイコの父親のセリフが喝采ものである。
 「生徒が問題を起こして教師がいちいち辞職しなければならないのなら、子供が問題を起こしたら親は親を辞職しなければなりません」
 
 雨降って地固まる式の学園ドラマの古典として、今も十分楽しめる。
 惜しむらくは音声が悪い。
 日本語字幕で鑑賞した。



おすすめ度 : ★★★ 

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損