1966年日活
83分、カラー

 デビュー間もない渡哲也主演の任侠アクション映画。
 鈴木清順の独特の美学と、日本が世界に誇る木村威夫の美術により、非常にモダンで芸術的でスタイリッシュな映像に仕上がっている。
 木村威夫は同じ清順の『ツィゴイネルワイゼン』、林海象監督『夢見るように眠りたい』、三國連太郎監督『親鸞 白い道』などを担当している。
 
 二十代半ばの渡哲也のカッコよさが光る。
 暗闇から聞こえてくる口笛、咥えタバコ、得意の空手をいかした立ち回り、清潔な角刈り、低音のしびれる歌声、女に用はない。あくまで硬派で、あくまで義理堅く。
 デビュー時についたこのイメージのまま、歳を取って、最後まで行ったのだなあ。
 
 当時、吉永小百合・和泉雅子と並ぶ日活のトップ女優であった松原智恵子の彫像のような品ある美しさも光っている。
 クラブ歌手の役でソプラノを披露しているが、歌は別人だろう。
 
 出番は多くないものの“ダンプガイ”二谷英明もカッコいい。
 グリーンのジャンパーをこんなふうに粋に着こなせる日本の男はなかなかいないだろう。
 後年、朝日テレビのドラマ『特捜最前線』で見せた包容力がすでに備わっている。
 
 たまに60年代日活映画を観るのも悪くないな。
 それにしても、本作のシュールな絵を観てつくづく思うのは、鈴木清順にこそ『黒蜥蜴』を撮ってほしかった。
 

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 渡哲也と二谷英明
 

おすすめ度 : ★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損