1月24日(日)、第28回介護福祉士国家試験を受けた。

 ついにこの日がやって来た。
 よくもまあ今日まで続いたものである
「ソルティさん、カイフクの受験資格を得るまでの3年間はここで頑張ったらいいよ」
と、新人のころに職場(老人ホーム)の15歳年下の先輩にアドバイスされた。
「はあ~、3年か・・・。長いな」
「あっという間ですよ」
と言った彼は上司とぶつかって早々退職してしまった。
 
 社会福祉士養成課程の施設実習が昨年10月いっぱいで終わって一息ついたあと、11月中旬からカイフクの試験勉強を開始した。毎日出勤前の1時間を過去問学習に充てた。問題集は昨年合格した職場の先輩から譲り受けた。

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 やってみたら思ったより簡単だった。8割近く解けた。
 というのも、三大難関資格と称される弁護士・公認会計士・医師をはじめとし、数ある国家資格試験の中で、介護福祉士国家試験はそれほど難しくない。合格率50%程度である。合格率30%で試験範囲のより広範な社会福祉士国家試験のほうがずっと難関である。
 やはり、超高齢社会――すでに日本人の4人に1人が65歳以上――の現実が、大量の介護のプロを今すぐに必要としているという事情によるのだろう。
 ソルティの場合、福祉系学校を卒業あるいは在学中の受験生とは違って、3年9ヶ月の実務経験がある。現場で身につけた(体で覚えた)知識がある。
 これがやっぱり強い。
 机上でテキストを読んで暗記するのとは理解の深度が違う。何と言っても、目の前に対象となる相手(=高齢者)がいて、介護福祉士やケアマネ資格を持つ先輩はじめOT(作業療法士)や看護師など経験豊富なプロ達の教えを受けながら日々介護実践しているのである。中でも、認知症高齢者の対応のコツなどは、日々の試行錯誤で第二の本能のごと身についている。(大げさ
 おおむね6割以上正答すれば合格ラインというのが例年の動向であるが、私見によれば、《一般社会常識+3年間の真面目な現場経験+過去問学習》で、まず合格できるようなレベルに試験問題が作成されているように感じる。職場の先輩達もほとんど過去問学習のみで合格している。(もっとも、出題傾向が高齢者分野に寄っているので、障害者分野で働いている人にとっては歴然と不利であろう。)
 さらにソルティは、過去1年半というもの、社会福祉士養成通信課程をやってきた。20冊以上の社会福祉関連のテキストを読み、30本以上のレポートを提出してきた。介護福祉士の試験内容は、かなりの部分が社会福祉士の試験範囲に含まれるので、知らず知らずカイフク試験の勉強にもなっていたのである。
 過去問をやってみて、「ま、これなら‘出たとこ勝負’でも大丈夫だろう」と思った。
 が、念には念を。ここでしっかり介護分野を頭に叩き込んでおけば、来年度の社会福祉士国家試験の基盤づくりにもなろう。
 
 年が明けてからは勉強時間を毎日2時間に増やし、専用の参考書を購読して熟読した。最後の10日間は、本も読まず映画も観ずブログ更新もせず、ブックオフで手に入れた一問一答問題集を暇さえあれば開いていた。

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 50歳過ぎてつくづく感じるのは、記銘力の低下である。なかなか記憶に残らない。記憶したものを引き出すのはさらに困難。試験は5択のマークシート方式だからいいが、これが筆記試験だったら、まず解答すべき概念は分かっていても単語が脳ミソから引っ張り出せないことだろう。
 一方、50歳過ぎだからこそ、認知症予防としてこういう試練をあえて自分に課すことの意義も感じた。二ヶ月継続してやっているうちに、だんだんと頭の中の霧が晴れてきて、あちこちでピックアップした用語や知識が脳の中で体系化してくるのを実感した。そうなると、記憶に残りやすくなる。そう。学生時代に暗記が得意だったのは、単に脳ミソが若いからだけではなく、毎日学校で授業を受けて脳を活性化していたからなのである。
 「使わなければ退化する」は生物学的事実である。

日大キャンパス
 
 自分が指定された試験会場は、京王線下高井戸駅にある日本大学文理学部。
 開場1時間前の午前8時に駅に到着した。早くも参考書を手に会場に向かう人の列がある。ここ数年、全国で約15万人が受験している。
 コンビニでサンドイッチを買い、ネットで見つけておいた駅近くのインターネットカフェに直行する。
 6時間パック1500円を支払う。これで、昼食休憩の居場所も確保した。
 隣のブースから、ネットカフェ難民らしき60がらみの男がビニール袋をガサゴソといじくる音がする。まさに「日本の高齢者問題、ここにあり」だ。
 ネットカフェの個室で、飲み放題のコーヒーとサンドイッチで腹ごしらえをしたら、いざ最終チェック!
 ・・・ではなくて瞑想をしていた。
 ここまで来たらもう、やってもやらなくても同じこと。むしろ、いかにして平常心を保ち、いかにして寝不足の頭を――案の定、前夜は5時間弱のレム睡眠(夢を見る浅い睡眠)であった――すっきりさせるかのほうが大事である。
 長年の修行の賜物で、30分も瞑想すれば集中状態(定)に入り、気は充実し、心はすっかり落ち着いた。
 その状態を維持したまま、会場入りする。

 受験者でいっぱいの教室を緊張感が支配している。
 試験開始前のお決まりの説明では、一つ予想外のことがあった。普通は試験開始後1時間で退出自由となるのだが、「本日、雪のため交通機関が乱れ、鹿児島県内の会場で開始時間が1時間遅れます。そのため、今回は途中退出はなしとします」とのこと。
 朝から寒かった。西日本のほうで降雪予報が出ていた。しかし、まさか鹿児島県とは・・・。
 試験時間は午前が1時間50分、午後が1時間45分。問題数は午前が68問、午後が52問。一問解くのに1分使っても十分時間が余る。途中退出を目論んでいたのだが、ふいになってしまった。

 試験内容は・・・・。
 1.一般常識(良識)及び読解力で正答できる 30%
 2.普段の業務で習得した知識で正答できる 30%
 3.過去問や参考書を入念にやっておけば正答できる 30%
 4.勘が良い、あるいは運が良ければ正答できる 10%
 といった感触であった。
 ソルティは昔から、こと試験に関しては勘が働かない(=分かっていることしか正解できない)タチなので、上記4を除いた90%得点を目指したのであるが、帰宅後、業者の解答速報で答え合わせしたら正答率85%であった。ケアレスミスと‘裏を読みすぎ’ミスが数問あった。
 むろん、合格圏内である。

 試験終了後、日大キャンパスに一斉にあふれ、下高井戸駅までの道を埋め尽くした受験生の数に、わが国の介護需要の高さを改めて感じた。
 こんなにいるのに、まだ足りない・・・。  

 最後に、ソルティが「やっておいて良かった」とつくづく思ったことは何か?
 1. 模擬試験を受けた。
 2. マークシートを塗りつぶす練習をした。
 3. 同じ職場の受験する仲間たちと励ましあった。
 4. 試験会場の下見をした。
 5. 当日ズボン下にスパッツを履き、厚手の靴下を2枚重ねした。

【正答】5番
【解説】暖房が入っているとはいえ、1月下旬の大学の広い構内や教室は底冷えする。女性と中高年男性は下半身の冷えに悩まされ、集中力が削がれる危険がある。トイレも近くなるであろう。老化は足から。「脱健着患」よりも「頭寒足熱」を。


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