東京駅のそばにある三菱一号館美術館にて開催中。

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河鍋暁斎(かわなべきょうさい、1831-1889)は幕末生まれ。
6歳で浮世絵師歌川国芳に入門。9歳で狩野派に転じてその正統的な修行を終え、幕末明治に「画鬼」と称され、絶大な人気を博した絵師です。
一方、三菱一号館を設計した英国人建築家ジョサイア・コンドル(1852-1920)は、政府に招かれ明治10(1877)年に来日、日本の近代建築に多大な功績を残しました。彼は日本美術愛好家でもあり、暁斎に弟子入りして絵を学び、師の作品を海外に紹介しました。(展覧会公式パンフレットより)

 三菱一号館に行くのも、暁斎の絵を生で見るのもはじめてである。 
 もともとの一号館は1968年に取り壊し、今建っているのは2009年に完成したレプリカである。東京駅の地下道から直結するこんな騒々しいオフィス街のど真ん中に、木々と噴水と美術品と赤レンガの壁に囲まれた空間があることに感激。忙しいビジネスマンやOLが昼休みに憩うのに恰好の場所である。
 
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 標題どおり弟子コンドルの絵と暁斎の絵が展示してあるのだが、両者の画力、才能の差は歴然。
 コンドルは西洋人の手によるものとは分からないほど日本画をマスターしている。器用である。
 しかし、やはり本業は建築家。コンドルのコーナーから暁斎のコーナーへと足を踏み入れたとたん、すぐれた絵の放つ圧倒的な輝きと磁力に感嘆した。

 なんといっても驚くのは、暁斎の作品のバラエティに富むこと!
 筆遣いの巧さの光る山水画から、色彩あざやかで彫刻的表現の冴える道釈人物画(道教と仏教に関する人物画)、ユーモラスで漫画チックな妖怪・幽霊画、斬新なテーマと緻密な表現に唸る浮世絵チックな美人画、18歳未満は大人付き添い必要(と注意書きがある)あっと驚く春画、流行の芸能・演劇を描いた風俗画、同じ国芳の弟子であった月岡芳年と紛うような生首や骸骨や死体を生々しく描いた残酷絵、そして大胆な構図と見事な筆捌きとまるで人間のようなしぐさや表情がなんとも微笑ましい動物画(国芳の影響大か)・・・。

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 次から次へと繰り出される、スタイルもテーマも色彩も様々な絵の氾濫に、複数の画家の展覧会を見ているかのような錯覚すら覚える。実にゴージャスな才能を持った絵師である。
 すっかり満腹した。
 この展覧会は9月6日までだが、これからきっとうなぎ登りで来場者が増えていくのは間違いない。(半分は口コミで聞いた春画にひかれて・・・)
 ショップでおみやげに七福神の絵葉書を買った。

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   併設の『カフェ1984』はかつて銀行の営業室として利用された空間を復元したもので、古代ギリシア建築の柱(イオニア式?)を思わせる木の柱が何本も立って高い天井を支えている優雅で落ち着くカフェである。
 ここで一緒に行った友人が暁斎フロートを、自分はギネスフロートを注文する。
 
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 西洋かぶれする前の日本には、素晴らしい画家がたくさんいたんだなあ。
 単に好みの問題か。