ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

藤純子

● 映画:『日本女侠伝 真赤な度胸花』(降旗康男監督)

 1970年東映。

 藤純子主演の日本女侠伝シリーズ第2弾。
 開拓時代の北海道が舞台となる西部劇風ドラマである。
 普段はきっちりと帯を締めた着物に結い上げた髪も艶やかな藤純子が、『二十四の瞳』の女教師の如く、洋装に髪を長くたらし上品な日本語をあやつる姿は、「おっ」と思うほど新鮮である。すっきりした顎のラインと典雅なたたずまい、声優の池田昌子によく似た声は、オードリー・ヘップバーンを思わせる。
 藤純子とヘップバーン。まったく思いもつかなかった相似に惑乱する。
 西部劇で言えば「シェーン」のように、風のように現われて風のように去っていく高倉健も相変わらず渋くてカッコいい。
 高倉健演じる風見五郎が藤純子演じる松尾雪に愛を告白するシーンの気障っぽさといったら、ほとんどポエムである。アイ・ラブ・ユーという言葉を持たないこの時代の日本人が、いきなり相手を奪うのではなしに(とりわけそれはストイックな健さんには許されない)、相手に気持ちを伝えるには、どうしても歯の浮いたセリフと気の利いた演出を用意しなければならない。それが日本映画の恋愛シーンの繊細さ(あるいは歯がゆさ)を生んできたのであろう。
 冗談とも本気ともつかぬ口調で「お前に惚れたんだ」と欲望まるだしで雪に迫るトッカリ松(=山本麟一)を歯牙にもかけず、「アイ・ラブ・ユー」を言わない(言えない)風見五郎を選びとる雪の姿勢に、日本人の言葉に対する不信を読むと言ったらうがちすぎだろうか。




評価:C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 藤純子礼讃!! 映画:『日本女侠伝 侠客芸者』(山下耕作監督)

 1969年東映。

 緋牡丹お竜で一世を風靡した藤純子の別シリーズ。
 女博徒お竜の匂い立つ花の如き凛とした美しさはもはや伝説の領域にある。それに比べればキャラクター設定としては弱いものの、やはり艶やかで度胸がよく小股の切れ上がった藤純子がここにいる。
 しかも、今回は芸者役ということで幼い頃から身につけた日舞の腕を惜しみなく披露してくれる。その芸の確かさは、‘女優’という肩書きを恥じることなく振り回す昨今のションベン臭いアイドルあがりを、大部屋の隅っこのゴミ箱あたりまで吹き飛ばす力強さ。実際、こんな芸者がいたら置屋はいくつも蔵が立つであろう。
 相手役の高倉健もあいかわらずカッコいい。カッコよさとは、つまるところ‘ストイック’にあることをこの男ほど教えてくれる人はいない。
 ストイック――すっかり死語になった言葉である。

 東宝、松竹、大映、東映、日活・・・。
 それぞれの制作会社が専用の撮影所を持ち、専属の監督や撮影スタッフ、男優や女優を擁し、映画を量産していた、いわゆる‘撮影所システム’は70年代に崩壊した。
 この作品の制作は69年。まさに撮影所システムが終焉しようとする間際である。
 この映画を見ていると「良心的」「職人技」という言葉が自然と浮かんでくるが、それこそ撮影所システムだからこそ可能だった映画制作技術の蓄積と次世代への教育、すなわち伝統が生きていた証であろう。それを支えるだけの大衆の映画愛が生きていた証であろう。
 映画の輝き。それなくしてはスターも輝くべくもない。
 
 最近レンタルビデオ店に登場した「昭和キネマ横丁」の一作である。




評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
 
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

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