2022年アメリカ
130分

 『ゲット・アウト』『Us アス』と、突飛でおぞましいアイデアとシニカルな社会批判を宿した作品で、一躍、有名監督の仲間入りしたジョーダン・ピール。
 第3弾はSFサスペンスであった。
 
 2度の成功が資金を集めたのだろう、大掛かりな野外ロケのもと、SFX(特殊効果)およびVFX(視覚効果)を駆使したスピルバーグ風映像が展開される。
 『ジョーズ』『未知との遭遇』『E.T.』へのオマージュであるのは間違いあるまい。
 チンパンジーとアジア系の少年が、互いの拳と拳を合わせようと腕を伸ばすシーンで『E.T.』を想起しない映画ファンはいないだろう。
 もっとも、『E.T.』のそれとはかけ離れた、おぞましくも悲惨なシチュエイションにおける友情の交感であるが・・・。

 さらには、空から襲い来るUFO=巨大異生物(Gジャンと呼ばれる)の生態や形状に、『エイリアン』あるいは『エヴァンゲリオン』の第何番目かの使徒を思い出した人も少なくあるまい。
 DVD付録のメイキングによれば、あの異生物はメイプルソールの蘭、クラゲやタカアシガニやウニやタコ、大型帆船、さらにはマリリン・モンローのかの有名な写真が元ネタになっているという。
 ソルティは伊藤潤二の『地獄星レミナ』の気色悪さに通じるものを感じるとともに、なぜか『NHK紅白歌合戦』の名物だった小林幸子×美川憲一衣装対決を思い出し、ちょっと笑った。


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Gordon JohnsonによるPixabayからの画像


 Gジャンがついに雲の中から正体を現し、主役の黒人兄妹たちに襲いかかる後半からは、息もつかせぬスリルと迫力、映像の面白さで魅せてくれる。
 が、そこに至るまでが冗長で退屈。
 チンパンジー主演のファミリードラマの仰天エピソードはたしかに興味深いけれども、ストーリー構成的に組み込む必要があっただろうか?
 チンパンジーという実在する動物の生々しい存在感とリアリティある野性に、肝心のGジャンが“喰われてしまった(笑)”感が否めない。
 譬えるなら、電飾豪華衣装の幸子も、美輪明宏の「ヨイトマケ」の前には敗れるといった呈・・・。 

 130分は長すぎる。
 話を整理して100分程度に収めたら、もっと面白くなったと思う。
 NOPEとは、NOのスラング(口語体)である。




おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損