JR駒込駅北口から徒歩12分のところに旧古河(ふるかわ)庭園がある。
しばらく前から気になっていた。
しばらく前から気になっていた。
瀟洒な洋館と、それを取り巻く何十種類もの薔薇で有名なのは知っていた。
5月中旬ともなれば、たくさんの薔薇好きで賑わうことも。
それとは別に、広大な敷地内には日本庭園もある。
気になったのはそちらである。
休日の午前中に訪ねてみた。
ここは明治時代、陸奥宗光の土地であった。
どこかで耳にした名前だなあと思ったら、井上馨や大隈重信らと共に、江戸末期の開国から続いていた不平等条約の改正に尽くした人である。
関税自主権の撤廃とか治外法権の回復とか、世界史で習ったのを覚えている。
宗光の次男・潤吉が、足尾銅山の経営で知られる古河財閥の初代当主・古河市兵衛の養子になった時に、土地は古河家の所有に移った。
それまで実子のできなかった市兵衛は、その後芸者との間に男子・虎之助をもうける。
2代目当主潤吉は早逝し、虎之助が3代目当主となった。
この古河虎之助が、1917年に本邸として造ったのが、今ある洋館と庭園である。
設計はジョサイア・コンドル(1852-1920)
鹿鳴館、ニコライ堂、岩崎久弥邸(現・旧岩崎邸庭園洋館)などを設計し、
「日本近代建築」の父と呼ばれた。
1階は見学料(400円)を払って、2階はガイドを予約して観ることができる。
庭園の見えるテラスでアフタヌーンティーを頼めば、
『ダウントン・アビー』の登場人物になった気分を味わえる。
この土地は武蔵野台地の崖線(ハケ)に位置している。
崖の上の高台に洋館が建ち、傾斜に薔薇やツツジの花壇が並び、低地に日本庭園が広がる。
日本庭園の周囲は木々で囲まれているので、たまに日本庭園があるのに気づかずに、洋館と花壇だけ見て帰ってしまう来場者もいるそうだ。
もったいない話である。
というのも、この庭園の設計者は、京都無鄰菴の作者・小川治兵衛その人なのである!
それを知らずにやって来たソルティ、このシンクロニシティにびっくりした。
青い鳥は案外近くにいたのね・・・。
浅い池の中を優雅に歩く白鷺
水面に映るマンションが残念
地下水を汲み上げて作った滝
人工的な気配を排した野趣あふれる景観が治兵衛の理想だったようだ
洋館の建つ高台方面を見やる
東山を借景とする無鄰菴には適わないものの、奥行きを感じさせる造形はさすが
治兵衛は石の使い方が天才的
様々な土地から集めた大小の石を自在に使いこなしている
富の象徴(つまりは成金の見栄)だったようで、ちょっとお下品。
施主の要望には名匠・治兵衛も逆らえまい。
木々で隠すなどの工夫の跡がうかがえる。
関東大震災(1923年)の折に、この庭は被災した2千の人々の避難所になり、当主の虎之助夫妻は敷地にあった温室を壊して仮設住宅を建て、被災者を支援したという。
コンドル設計の洋館はびくともしなかった。
イギリス生まれのコンドルは、日本の地震の多さに驚き、耐震性ある建築物について研究していたという。
戦後はGHQに接収され、返還後30年間の無人状態を経て、1982年に東京都名勝指定、2006年に国の名勝に指定された。
現在ここの所有者は国である。
まったり