103分
イーロン・マスクがCEOを務めているテスラ(Tesla)の社名の由来となった、天才発明家ニコラ・テスラ(1856-1943)の伝記(電気?)映画である。
テスラと言えば、直流V.S.交流の文字通り“火花散る”電流戦争はじめ、元雇用主であったトーマス・エジソンとの確執がよく語られる。
発明の才や後世への貢献度においては両者は互角と言ってもさしつかえないと思う。
が、現実社会を生きる巧みさやバイタリティにおいては、圧倒的にエジソンが上であった。
が、現実社会を生きる巧みさやバイタリティにおいては、圧倒的にエジソンが上であった。
テスラは今で言うならアスペルガー障害か自閉症、かつ強迫性障害であろう。
対人関係に難があり、極度の潔癖症であり、些末なことにこだわりがあった。
自分の好きな研究をしたいというのが一番の希望で、金銭や名誉や権威、そして恋愛や家庭にはあまり興味なかったようだ。生涯独身で最後は無一文に近かった。
自らいくつもの会社を立ち上げ、何百人という従業員を雇い、訴訟王と呼ばれたほど争い好きで、生涯2度の結婚をして6人の子持ちであった大富豪エジソンとは、まったく馬が合うまい。
2人のライバル関係も、強い敵愾心を抱いていたのはエジソンのほうで、テスラはエジソンの横やりをただ疎ましく思っていたのではないかという気がする。
本作でも、イーサン・ホーク演じる寡黙で控えめで世間知らずのテスラに対し、カイル・マクラクラン演じるエジソンは、傲岸不遜で押し出しが強く、抜け目ない。
聖と俗の対比みたいに見えるところも、両者を比較する面白さなのだろう。
映画自体は、主人公が生きた時代を忠実に再現して描く通常の伝記物とは違い、かなり融通無碍な作り方をしている。
明らかにCGと分かる安っぽい背景を使ったり、語り手であるテスラの恋人アン・モルガンにインターネット検索させたり、テスラにティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド(Everybody Wants To Rule The World )」を歌わせたり・・・。
教科書的な伝記から離れた斬新な発想という感想と、低予算まるわかりの苦肉の策という感想が、五分五分である。
個性的魅力と孤独を表現するイーサン・ホークの演技は素晴らしい。
世界最初の国際的スター女優と言われるフランスのサラ・ベルナール(演:レベッカ・デイアン)をめぐるエピソードも興味深い。
エジソンが発明した蓄音機に、サラがラシーヌの戯曲の一節を吹き込んでいるシーンが出てくる。(これは史実)
映画がもう少し早く生まれていたら、サラ・ベルナールの『サロメ』や『椿姫』をスクリーンで見ることができたのになあ・・・・。
おすすめ度 :★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損