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日時: 2023年4月30日(日)13:30~
会場: 杉並公会堂 大ホール
曲目:  
  • W.A.モーツァルト: 歌劇「フィガロの結婚」K.492 序曲
  • J.ヨアヒム: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 「ハンガリー風」 op.11 
  • A.ブルックナー: 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
ヴァイオリン: 尾池亜美
指揮: 後藤悠仁

 GWの荻窪駅周辺は人がいっぱい。
 杉並公会堂大ホールも9割方埋まった。
 ヨアヒムなんて作曲家の名は聞いたことないし、ブルックナーも日本ではメジャーではない。( i-amabileの「演奏される機会の多い作曲家」ランキングの30位に入っていない)
 この人出はいったい・・・?
 いや、滅多に演奏されないからこそ、聴く価値が生じるのか。
 ヨアヒムのヴァイオリン協奏曲を演奏するソリストは杉並区出身というから、応援に駆けつけた区民も少なくなかったろう。

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 配布されたプログラムによれば、ヨセフ・ヨアヒムは1831年ハンガリーの小さな町に生まれた。
 5歳でヴァイオリンを弾き始め、才能にも家族の協力にも師にも恵まれ、メンデルスゾーンやリストらの指揮でソリストデビューを果たす。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲の世界初演を果たした名ヴァイオリニストである。
 作曲家としてもいくつかの作品を書いたのだが、現在ではほとんど演奏されない。
 ウィキの記述は容赦ない。
「優秀ではあるが、個性に欠ける」
 
 残念ながら、ソルティもまた、この評価は妥当かなと思った。
 第1楽章の途中から集中力が途切れ、睡魔に襲われ、音楽が心地よいBGMになって、ほぼ幽体離脱していた。
 最終楽章(全部で何楽章あったのかも定かでない)で、肉体に帰還した。
 そこからは、ソリスト尾池亜美の圧巻のパフォーマンスに引き込まれた。
 やはり、ヴァイオリンの名手が作ったヴァイオリン協奏曲だけあって、ヴァイオリンの技巧の極地が編みこまれていた。
 目にも見えない速さで激しく上下する弓の摩擦で、ヴァイオリンから火が噴き出すのではないかと思ったほど。
 全身全霊込めた演奏に、客席から惜しみない声援と拍手が送られた。

薔薇の門


 ブルックナーははじめて。
 この第4交響曲『ロマンティック』がどうやら一番人気で、上演回数が多い。
 デビューにはもってこいだ。
 印象としては、第1楽章はワーグナー風、第2楽章はベートーヴェン風、第3楽章はウェーバーかムソグルスキー風、第4楽章はバッハ風、そして全体としてブラームス風。
 ブルックナーの個性がいまひとつ見えてこなかった。
 いや、プログラムに書いてあったように、「ブルックナー開始」とか「ブルックナー休止」とか「ブルックナーリズム」とか、聴けばそれと分かる特徴はあるのだろうが、それらはすべて形式上の特徴であって、曲調や曲想といった内容すなわち作曲家の精神を示すものではない。
 内容的には、どの楽章も同じような展開で、同じような曲調の繰り返しで、馴染みやすいメロディもなく、面白みに欠ける気がした。
 深みと憂愁と耽美の感じられる曲が好きなソルティとしては、がっかり。

 まあ、一回で判断するのは拙速である。
 評価の高い5番、8番、9番を聴いてから、鑑賞レパートリーに入れるかどうか決めることにしよう。
 ちなみに、ブルックナーの交響曲は演奏時間の長さから敬遠される傾向にあるらしい。
 今回の『ロマンティック』も1時間は超えた。
 が、マーラー好きのソルティにとっては100分程度はどうってことない。

 ときに、ブルックナーはロリコンだったという噂。
 ブルックナーがメジャーになりきれないのは、そのあたりも関係しているのか・・・。

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