2018年アメリカ

 『ミッドサマー』がなかなか面白かったので、同じ監督の前作を借りてみた。
 「21世紀最高のホラー映画」という評価もあるようだが、怖くはなかった。
 というか、この歳になると一番怖いのは人間であって、それが悪魔であれ悪霊であれ、霊的なものは怖くない。
 昔、お祖母ちゃんが言ってたとおりだ。
 その意味で、『ディスコード』や『DAU. ナターシャ』や『アンテベラム』や『ニューオーダー』のほうがよっぽど怖い。
 右であれ左であれ、いかなる宗教であれ、自らを「善、正義、まっとう」と信じて他を断罪し排斥しようとする狂信的な人間が一番怖い。
 とりわけ、それが政治と結びついて集団化したときほど恐ろしいものはない。

 なので本作も、一家に“継承”される精神的な病がどのように再発あるいは発現して、幸せな家族が崩壊していくのかが焦点と思えた前半は、じわじわした怖さと緊張感をもって観ていたのだが、降霊会とか黒魔術とか超常現象とかが出てきたあたりで緊張の糸が切れてしまった。
 地獄の王・悪魔ペイモンとか言われてもなあ・・・・。
 我々日本人にとって、地獄の王は閻魔様だし・・・・。
 個人的には、『ミッドサマー』のほうが怖かった。

 母親役をつとめたトニ・コレットの演技は凄まじいものがある。
 親譲りの精神不安の気質、芸術家としての自負、夫への愛、子供たちへの愛情と苛立ち、そして悪霊に憑依された世にもグロテスクな姿。 
 よくもここまで、と女優魂に感嘆した。

ペイモンの紋章
悪魔ペイモンの紋章
切り取ってワッペンを作ろう!



おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損