2020年小学館

 すこし前に話題になったコミック。
 青春ワニ君を主人公とするオールカラー四コマ漫画である。
 最大のポイントは、タイトルにある通り、主人公が100日後に死ぬことが決まっていて、巻頭見開きの0日目(死ぬまであと100日)から始まって、一日ずつカウントダウンされていく構成である。
 読者がページをめくるたび、ワニ君の寿命は減っていき、最後の日が近づく。
 もちろん、主人公のワニ君はじめ、登場人物の誰もそんな運命を知らない。

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 読者だけが知っているそんな残酷な設定の中、のんびりした気のいい性格のワニ君は、現代日本の多くの若者と変わりない日常を送っている。
 バイクで事故った友達へのお見舞い、バイトの先輩への恋と失恋、アパートの自室でコンピュータゲームに熱中、田舎の母親とメールのやり取り、初詣のおみくじに一喜一憂、コタツに入ってレンタルビデオ鑑賞、友達とのラーメン店通い・・・・。
 とくにやりたいこともなく、将来の夢もなく、とりあえず、平和で気ままなモラトリアムな日々。
 あえて四コマ漫画にして読者に提供するほどの滑稽さもオチもユニークさもない平凡なエピソードの羅列である。
 99日目までは。

 100日目が来た時に、読者はめくるめくような反転に遭遇する。
 平凡きわまりない日常が、かけがえのない宝物であったことに気づかされる。
 と同時に、このマンガがオールカラーでなければならなかった意義を知るだろう。

 サン・テグ・ジュペリの『星の王子様』や佐野洋子の『100万回生きたねこ』同様、大切な人にプレゼントするのに最適な本である。
 



おすすめ度 :★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損