日時: 2023年7月2日(日) 14時~
会場: 東京芸術劇場 コンサートホール
曲目:
- ファリャ: バレエ音楽《三角帽子》第2組曲
- シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
- チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 作品64
指揮: 田代 俊文
ヴァイオリン: 中野りな
今回のハイライトは、2曲目のヴァイオリン協奏曲だった。
なにより特筆すべきは、音色の素晴らしさ!
張りと艶とコクのある美しい響きが、巨大なホールの空気を一瞬にして変えた。
「あのヴァイオリン、生きているんじゃないか」と思うほどの人間的ぬくもりと表情の豊かさがあった。
中野りなが使用しているのは1716年製のストラディバリウス。
やっぱり、最低でも億はくだらぬという世界的名器は音が違うなあと思ったが、実はソルティ、開演前に中野のプロフィールを読んで、そのことを知っていた。
一般財団法人ITOHより貸与されているのだという。
一般財団法人ITOHより貸与されているのだという。
先入観が耳に魔法をかけたのかもしれない。
一般財団法人ITOHは、将来有望な日本の若手音楽家に対し銘器の弦楽器、弓等を無償貸与する事を通じ、その人達の育成に間接的に役立て、もって日本の芸術文化の振興に寄与することを目的として2013年9月9日に設立されました。(一般財団法人ITOHの公式ホームページより抜粋)
ITOHとはなにかの英語の略語かと思ったが、どうやらそのまま「いとう」と読むらしい。
この団体の設立者にして代表理事が伊東さんという紳士なのだ。
素晴らしい活動である。
ともあれ、響きの美しさに陶然となり、演奏中は肝心の曲の主題や曲調やオーケストレイション(管弦楽法)やオーケストラとのコンビネーションにほとんど意識が向かわず、シベリウスであることも忘れ、ただただヴァイオリンの響きに包まれていた。
むろん、楽器からこの音色を引き出せる中野のテクニックあってのことである。
2004年生まれというから現在21歳。
若いのに驚嘆すべき技巧の持ち主。
最終楽章では圧巻のパフォーマンスが会場を圧倒した。
チャイコの5番は無難にまとめた感じ。
個人的には、こちらはもうちょっと冒険してほしかったな。