2022年イギリス、アメリカ
125分
脚本 ジュリアン・フェロウズ

 英国大ヒットTVドラマの映画版第2作。
 TVシリーズの放映開始は2010年、ほんとうに息の長い人気である。
 これだけ長くやっていると、出演者たちは本当のファミリーみたいになってくるだろうし、観る者からすれば遠い親戚みたいな感覚になってくる。
 懐かしの顔触れとの再会が楽しかった。

 今回もいろいろと事件は起こるのだが、最大のものは、ラストに用意されたヴァイオレット・クローリー〈先代グランサム伯爵夫人〉の逝去である。
 息子夫妻、娘、孫、親友らが見守る中、各人に言いたいことを言い放って、穏やかにして荘厳な最期を迎える。
 女優マギー・スミスの独壇場だ。
 それはまた、このシリーズからのマギーの卒業を意味するわけで、ヴァイオレットを看取る親族たちの眼差しは、偉大な女優マギーとの共演という光栄に浴し、撮影時の様々な思い出を反芻する後輩役者たちの感謝と愛情にあふれ、演技を超えた名シーンとなっている。
 ヴァイオレットことマギー・スミスの存在が、ドラマの中でも、実際の撮影現場においても、非常に大きなものであったことが知られる。
 芸の上で本邦で匹敵する女優を上げるなら、亡き杉村春子だろうか。

 本シリーズの見どころの一つは、ダウントン・アビーの使用人の一人で最後は執事になったトーマス・バロー(演:ロバート・ジェームズ=コリアー)を同性愛者に設定したことである。
 英国の現代ドラマでゲイが出てくるのはもはや珍しくもなんともないが、20世紀初頭を舞台とするドラマでゲイがレギュラーキャラとして登場し、宿命を背負った一人の人間として、その屈折や葛藤や悲しみや成長が描かれたのは画期的であった。
 むろん、LGBT視聴者を意識した制作側の目論見あってのことだろう。
 同性愛が違法とされた時代にトーマスの幸福を描くのはなかなか難しかったことと思うが、理解ある主人一家や同僚に恵まれ、本作の最後ではハリウッド男優との新天地アメリカでの生活という道が開かれた。
 「自分に正直に生きたい」というトーマスのセリフは、制作者のLGBT視聴者へのエールでもあろう。
 こういうドラマがヒットしないわけがない。

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出演者一同
左端がヴァイオレット・クローリー役のマギー・スミス



おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損