1953年アメリカ
95分

 殺人犯のぬれぎぬを着せられたローガン神父(=モンゴメリー・クリフト)は、本当の犯人を知っていた。
 だが、それを警察に伝えることは職務上できなかった。
 真犯人の告解を聴いていたからである・・・・・。

 主演のモンゴメリー・クリフトは正統派二枚目で、ゲイであったという。
 どこか影ある美貌の正体は、「告白できない」秘密を生涯抱え屈託していたためであろうか。
 そのパーソナリティが、ここでは、真実を知っているのに話すことができず懊悩する神父の姿にぴったり重なって、リアリティある深い演技となっている。
 クリフトは30歳頃からアルコールとドラッグに溺れるようになり、35歳のとき交通事故で顔面整形するほどの大ケガを負うなど、波乱が続いた。
 46歳で心臓発作で亡くなった。 

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モンゴメリー・クリフトとアン・バクスター

 ときに、日本人には馴染みの薄いキリスト教の告解という儀式は、他人に悩みを話すことで心の重荷を軽くするカウンセリング的役割を果たしてきたと思う。
 が一方、担当地区の住民たちの秘密を知った聖職者には決して小さくないパワーが付与される。
 大事な秘密を握られている住民にしてみれば、聖職者の言うことに逆らうことは――たとえ彼を信じていて秘密が洩らされる心配はないと分かっていたとしても――容易ではなくなる。
 これは思うに、住民の心を支配しコミュニティを掌握するためにキリスト教会の編み出した奇策という気がするのだが、どうなのだろう?
 結構長い間、電話や対面での相談の仕事をしてきた者の一人として、気になるところである。
 
 もっとも、相手がモンゴメリー・クリフトのような美形神父であったなら、おそらく多くの女たちは適当な罪をでっち上げ、念入りに化粧し着飾って、いそいそと告解に通うだろう。
 ゲイの神父には効果ないことも知らずに。
 (彼の心は聖歌隊の少年の一人にあったのであった。つづく・・・・)




おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
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★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損