2022年アメリカ
122分

 サスペンスホラーSF。
 砂漠の中にあるヴィクトリーという街に、夫ジャックと暮らす専業主婦アリス。
 美しく立派な家、ハンサムで優しい夫、仲の良い女友達、パーティやお稽古事や買い物に追われ・・・・すべてが完璧で絵にかいたような幸福な日々。
 街の男たちは、毎朝高級車に乗って、砂漠の中にある会社に出かけていく。
 そこは社員以外の住民は立ち入り禁止であった。
 夫は、いったいなんの仕事をしているのだろう?
 ヴィクトリー計画とはなんのことか?
 「心配するな、ダーリン」
 ジャックは何も教えてくれない。

 センスのいいスタイリッシュな映像と隠された真相への興味で、最後まで飽きさせない。
 ネタばらしはしないでおくが、ある有名なSF映画のアイデアを彷彿とさせる。
 一見ユートピア、実はディストピアという、ジャ×ーズ帝国のような物語。

 「砂上の楼閣」という言葉は中国の故事から来ているものと思っていたが、そうではなく、聖書の「マタイによる福音書」の中のイエスの次の言葉が由来らしい。

 わたしの言葉を聞いて実践する者は、岩の上に家を建てた賢い男のようなものだ。
 雨が降り、川があふれ、風が吹きつけようとも、その家はびくともしなかった。
 岩の上に建てられたからだ。
 
 わたしの言葉を聞いて実践しない者は、砂の上に家を建てた愚かな男のようなものだ。
 雨が降り、川があふれ、風が吹きつけると、その家は倒れて崩壊した。 

 英語では a house built on sand となる。
 ヴィクトリーという街はまさに砂上の楼閣であった。

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Paul BrennanによるPixabayからの画像

 ここに描かれる幸福像は、夫が働き妻は家事と育児をするという(トランプ元大統領の熱狂的サポーターが求める)50年代アメリカの典型的理想の家庭である。
 その後ウーマンリブが来て、フェミニズムが来て、世の男女関係も夫婦関係も一変したけれど、結局男たちの夢は50年代の「古き良きアメリカ」「パパはなんでも知っている」にあるのだろうか。
 女性監督であるオリヴィア・ワイルドはそう揶揄っているようだ。
 
 
 
おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損