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日時: 2023年9月24日(日)14:00~
会場: J:COMホール八王子
曲目: 
  • 真島俊夫: コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象
  • 真島俊夫: 波の見える風景(改訂新版)
  • 真島俊夫: ニライカナイの海から
  • ロバート・W・スミス: 海の男達の歌
  • 清水大輔: シー・オブ・ウィズダム~知恵を持つ海
  • フランコ・チェザリーニ: 3つの交響的素描「青い水平線」
  • (アンコール)上岡洋一: マーチ「潮煙」
指揮: 山田雅彦

 セレンディピティ・ウインドオーケストラは奇数回公演でクラシック曲を、偶数回公演でゲーム音楽などを取り上げる楽団。
 Serendipity とは「すてきな偶然」の意。
 Wind Orchestra とは「管楽器主体のオケ」のことを言う。
 実際、舞台上に弦楽器はコントラバスくらいしか見当たらなかった。
 普段なら第一ヴァイオリンのいるところにクラリネットが並んでいた。

 このオケを聴こうと八王子くんだりまでやって来たのは、今回のコンサートの標題「青の情景」が示すように、「海」をテーマにした楽曲ばかり集めたものであったから。
 9月とは言えまだ暑いので、涼を求めたい気分があった。
 とりわけ、プログラムの中に沖縄をテーマにした曲があるのを見て、惹かれるものがあった。
 
 登場した女性演奏者たちがみな「海」を想わせる青や水色やシルバーといった寒色系のドレスをまとっているのに、「洒落た演出!このためにレンタルしたのかな?」と感心したが、そもそもこのオケのテーマカラーが「青」なのであった。
 ソルティはいまのところゲーム音楽には興味ないが、過去のプログラムを見ると、書下ろし曲を含め普段なかなか聞かれないような珍しい曲が並んでいる。
 今後も注視していきたいユニークなオケだと思う。

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JR八王子駅南口

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J:COMホール
コロナ前に来た時はオリンパスホールという名だった
栄枯盛衰
 
 第1部は真島俊夫(1949-2016)による3作品。
 3曲目の「ニライカナイの海から」は沖縄民謡をクラシック調にアレンジした感じで、沖縄の伝統楽器(サンバ、パーランク、四つ竹、エイサー太鼓)も使用される。
 概して、祝祭的なノリあふれる、明るくめでたい曲。
 沖縄の人はお祭りが好きで、酒を飲んで歌って踊るのが好きで、そのまま野天に寝るのが好きで・・・・なんて聞いたことがあるが、まさにそのイメージ。
 ただ、ソルティは今や沖縄戦の悲劇なしに沖縄を考えることができない。
 ここにあるのは、沖縄戦を知らない頃の沖縄本来の姿なのだろう。
 
 第2部は様々な作曲家による3作品。
 船乗りの海、高速帆船の疾走する海、和歌山白浜海岸の海、発光生物の棲む深海、巨大海獣が闘う北欧の海、シロナガスクジラが悠々と泳ぐ南の海・・・・さまざまな海の情景が描き出され、イメージを喚起され、非常に面白かった。
 「海」と一口に言っても、場所により、季節により、時間により、天候により、人と海との関係性により、さまざまな表情の違いがあって当然。
 「青」というカラーにも、ペイルブルーや藍色やターコイズや紺や群青や山口百恵の「蒼い時」など、いろんな「青」があるのと同様だ。
 
 演奏された計6曲の中で一番良かったのは、5曲目の「シー・オブ・ウィズダム~知恵を持つ海」だった。
 和歌山の白浜海岸と三段壁をイメージした曲とのことだが、非常に美しく表情豊か、壮大かつ繊細で、癒されるものがあった。
 カモメの鳴き声を楽器(ピッコロか?)で表現したのも見事はまっていた。
 作曲は清水大輔という現役作曲家で、なんと今回のコンサートの進行役をつとめていた。
 ユーモアある語り口で、それこそ紀州和歌山というより琉球モードの印象。

 コンサートが終わって外に出ると、気温はまだ30度ながら、秋風が八王子駅構内を通り抜けて、すがすがしいものがあった。
 心なしか潮の匂いが含まれているような気がした。

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高知県足摺岬から見た海