2009年アメリカ
99分
サム・ライミ監督と言えば、80年代に『死霊のはらわた』で大ブレイクしたことが思い出される。
その後、作品を追っていなかったが、いまだ健在であった。
オカルトホラーとスプラッタとグロの3拍子による相も変らぬ趣味の悪さは、本作でも遺憾なく発揮されている。
それをレンタルしてしまう自分もまた同じ穴のムジナであるが。
銀行の女子行員の対応に腹を立てた老婆が、その場で呪詛(スペル)を行い、それによって召喚された悪霊ラミアが、女子行員をさんざん脅かしたあげく最後には命を奪う、というストーリー。
しかるに、女子行員の対応は、法に則った、また上司の指示に従った、止むを得ないものなので、老婆の怒りは逆恨みとしかいいようがない。
「ぬあんて理不尽なんだ」と一瞬思ったが、考えてみると、女子行員が血も涙もない冷酷な人間だったら、老婆につきまとわれようが、ラミアに脅かされようが、観る者は「自業自得だ」と思うだけで、ハラハラドキドキはそこに生まれない。
彼女が出世争いや恋人との将来に悩み、自らがなしたちょっとした不親切に良心の咎めを感じるような、(観る者の大多数と同じ)小市民である――加えてキュートな若い女性である――からこそ、彼女に襲いかかる恐怖や不幸に観る者もショックを覚え、彼女が最後には救われることを期待するのである。
ときに、ラミアとは何者?
ラミアーまたはラミアは、ギリシア神話に登場する古代リビュアの女性で、ゼウスと通じたためにヘーラーによって子供を失い、その苦悩のあまり他人の子を殺す女怪と化した。
「ラミア」は古くから子供が恐怖する名として、しつけの場で用いられた。‥‥中略‥‥ 後の時代には、青年を誘惑して性の虜にしたあとこれを喰らう悪霊エンプーサの代名詞のひとつに使われた。誘惑のラミアーは、若者を喰らうのでヴァンパイアと比喩される。(ウィキペディア『ラミアー』より抜粋)
ギリシア神話由来であったか。
言われて見ると、女子行員に呪いをかける老女の顔立ちはギリシア系ぽかった。
アメリカに住むギリシア系移民に代々伝わる秘術という設定なのかもしれない。
東洋で言うなら、さしずめ鬼子母神+羅刹女か?
ジャニー喜×川か?
呪詛をかける老婆は、三途の川にいる奪衣婆か?
メリー喜×川か?
メリー喜×川か?
奪衣婆(埼玉県川口市西福寺)
おすすめ度 :★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損