1960年日活
84分
赤木圭一郎主演の拳銃無頼帖シリーズ第3弾。
舞台は金沢である。
60年代の金沢の駅や街中の風景が興趣深い。
ヒロイン役に笹森礼子を配し、宍戸錠、藤村有弘、二本柳寛などお馴染みのメンバーが出揃う中に、これが日活3作目となる吉永小百合が、いまだ「新人」のクレジットを頂いて出演している。
当時15歳。少女から大人へ、美少女から美女へと向かって、一作ごとに開花していく姿が確認できるのが嬉しい。
本作では、赤木演じる竜四郎の妹・則子役で、竜四郎の弟分である五郎の恋人という設定。
金沢の下町のおんぼろアパートに五郎と同棲しているのだが、その清らなる風情はまったく所帯じみていない。
それもそのはず。訪ねてきた兄・竜四郎に向かって則子は言う。
「あら、にいさん、ここはまだ所帯なんかじゃないのよ。結婚するまではお互いに純潔でいましょうって約束しているの」
あくまでもメルヘン。(男にとっては蛇の生殺し)
まあ、役の上ではともかく、実年齢15歳だからな。
メルヘンと言えば、二本柳寛。
小津の『麦秋』では杉村春子の息子役で、妻に先立たれたやもめ男を演じている。
通勤時に『チボー家の人々』なんか読んでいる文学青年くずれである。
ラストには原節子と結ばれるという、棚からぼた餅どころか棚からダイヤモンドといった光栄な役回り。
この世界的名作に「いいひと」役で出演している二本柳が、日活アクションシリーズではヤクザの組長のような悪役ばかり演じている。
本作では竜四郎の兄貴分である組長に扮しているが、自分の女(南風夕子)の裏切りに腹を立て、ビンタするわ、突き飛ばすわ、靴底で顔を踏みにじるわ、そのあとにレイプするわ、ひどい女性虐待を見せる。
『麦秋』の「いいひと」イメージ粉砕。
あんまりな小津調メルヘン崩壊。
杉村春子に叱られるぞ。
『麦秋』の杉村春子と二本柳寛
ロケは金沢市内だけでなく、石川県のあちらこちらの名所が使われているようだ。
色とりどりの幟で飾られた何艘もの船が、列をなして海へと繰り出していく風景が出てくる。
これはたぶん能登町のとも旗祭りではないか?
テレビのないこの時代、ロケにより地方色を伝えるというのも映画の大きな役割の一つだったのだろう。