2022年アメリカ
126分
フェミ色の濃いミステリードラマ。
アメリカの女性作家ディーリア・オーウェンズの同名小説が原作。
時は1969年。
舞台はアメリカ東南部ノースカロライナ州の湿地。
ある日、町の有力者の息子チェイスの死体が湿地の中で発見される。
容疑者として捕まったのは、幼いころに一家離散してから湿地に一人で暮らしてきたキャサリン。町の住民からは“湿地の娘”と蔑まれ、学校にも通えず、村八分にされてきた。
自然と孤独と本を友としてきたキャサリンは、内気だが美しく聡明な女性に育った。
キャサリンに惹かれたチェイスは、彼女にしつこくつきまとい、関係を拒まれると逆上し、暴力を振るっていた。
キャサリンに惹かれたチェイスは、彼女にしつこくつきまとい、関係を拒まれると逆上し、暴力を振るっていた。
ノースカロライナの湿地の風景が美しい。
アメリカにはこんなところもあるんだと、国土の広さと風土の多様性を再認識した。
大自然の中で孤高に暮らし、人間よりも動植物を愛する主人公の姿に、チンパンジー研究で有名な動物行動学者のジェーン・グドールや、『沈黙の春』『センス・オブ・ワンダー』の著書で知られる生物学者レイチェル・カーソンを重ね合わせた。
本作の第2の主人公は自然と言っていい。
検事と弁護士の激しい応酬によるキャサリンの裁判がスリリングに描かれる一方で、キャサリンの苦難の半生がたどられていく構成。
すなわち、法廷ミステリーとしての興味と、一人の強い個性をもつ女性の風変わりな人生ドラマへの興味が並行する。
フェミ色が濃いと言うのは、明らかに前者より後者のほうに重点が置かれているからである。
ミステリーとしては、最後の意外(でない)結末も含めて凡庸と言っていい。
同じように「法廷ミステリー+女性の生き方+大自然」の三要素をもつ工藤夕貴主演『ヒマラヤ杉に降る雪』(1999)を想起したが、やはりフェミ色の濃さは断然本作が勝っている。
『ヒマラヤ杉』の原作を書いたのは男性作家であり、描かれているのは50年代、作品の発表は90年代。
『ザリガニ』の原作は女性作家で、描かれているのは60年代、作品発表が2018年。
こうした根本的な違いに加え、本作ではプロデューサーが女性(オスカー女優のリース・ウィザースプーン)、監督も女性、脚本も女性、撮影や美術も女性と、主要スタッフを女性で固めている。(音楽のマイケル・ダナは男性である)
いわば、「女性の、女性による、女性のための女性解放ドラマ」といった趣きが強い。
米国映画業界の女性の発言力がまざまざと知られる。
米国映画業界の女性の発言力がまざまざと知られる。
その意味で本作は、鑑賞者が“男性であるか女性であるか”、あるいは“昭和生まれか平成生まれか”、で相反する感想を抱くかもしれない。
キャサリンの生き方、キャサリンの選択、キャサリンの決断、キャサリンの倫理・・・それを観る者がどう受け取るか。
いや、性別やジェンダーや年齢で人を区別するのは、それこそ時代遅れなオヤジ言説か。
ずばり、観る者のフェミニズム観が問われる作品である。
キャサリンを演じているのは、デイジー・エドガー・ジョーンズという英国の女優。
キャサリンの生き方、キャサリンの選択、キャサリンの決断、キャサリンの倫理・・・それを観る者がどう受け取るか。
いや、性別やジェンダーや年齢で人を区別するのは、それこそ時代遅れなオヤジ言説か。
ずばり、観る者のフェミニズム観が問われる作品である。
キャサリンを演じているのは、デイジー・エドガー・ジョーンズという英国の女優。
ナイーブな魂と意志の強さを備えた女性を好演している。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
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